ドラッグストアが正念場を迎えている。食品の安売りで業績を伸ばしてきたドラッグストアだが、最近様子がおかしい。「それほど安くない」(50代主婦)という声も聞く。何があったのか。(流通ジャーナリスト 森山真二)
食品安売りで成長したドラッグストア
成長はコロナ禍で「失速中」
勝利の方程式が崩れている――。
ドラッグストアは冷凍食品や加工食品などを、目いっぱい安売りして集客。来店したついでに、医薬品や化粧品など粗利益率の高い商品を買ってもらい、売り上げ、利益を上げてきた業態であることを業界で知らぬ人はいない。
それがこのところおかしい。小売業界の“体温計”である既存店売上高がさえないのだ。
例えばドラッグストア業界で売上高トップのウエルシアホールディングス(HD)は21年6月の既存店売上高は前年同月比2.3%増、7月4.1%増(同)、8月0.7%増(同)など、前年並みを維持するのがやっと。今までのような伸び率ではないし、2ケタも伸ばしていた頃と比較しても見劣りする。
ドラッグストア業界で“安売り王”の異名を持つコスモス薬品も6月4.2%減(同)、7月0.5%増(同)、8月3.7%減(同)という状況。業界上位のサンドラッグも8月4.0%減(同)となっている。
既存店売上高が落ちていることで、「ドラッグストアは安売りをやめ、売り上げ規模は追うのをやめたのか」と言われるとそんなことは決してない。
むしろ“ライン(取扱品目)”を広げるために安売りに拍車がかかるとみられる。粗利を落として安売りに精を出すのだ。