先週末に米国でアップルのiPadが発売され、日本のメディアも大きく取り上げていました。多くの人の関心は、iPadもさることながら、それがきっかけとなって日本でも電子書籍が普及するかという点にあると思いますので、今週はこの点について考えてみたいと思います。
電子書籍の本当のメリット
報道によると、米国ではiPadの発売初日に30万台が売れ、電子書籍は25万冊のダウンロードがあったようです。iPadブームであり、キンドル登場以来の電子書籍バブルの再燃とも言える状況です。
それでは、日本でも電子書籍は普及するのでしょうか。結論から言えば、ある程度普及するとは思いますが、爆発的な普及は当分ないのではと思っています。その理由は書籍の価格です。
米国で電子書籍が人気を集める大きな理由は、価格の安さです。米国ではリアルの書籍の平均価格はハードカバーで26ドル、ペーパーバックで13ドルと非常に高いのですが、それに対して電子書籍の価格は、キンドルの独壇場だった今年はじめまでは新刊書でも10ドル、iPadの参入によって出版社が価格交渉で優位になった後でも13~15ドルと、ハードカバーに比べて圧倒的に安いのです。
それに対して日本では、新刊書でも米国のハードカバーほど高くないですし、新書や文庫は千円以下の手軽な値段で買うことができます。常識的に考えて、日本で電子書籍が実現したとしても、例えば新書(800円程度)より圧倒的に安くなるとはちょっと考えにくいのではないでしょうか。
もちろんポジティブな面もあります。日本の若者の本離れにはすごいものがありますが、電子書籍ならウェブサイトを見るのと同様な気軽さで読むようになる可能性はないとは言えません。また、本を読むという観点では、価格や携帯する利便性(日本の本は米国に比べて圧倒的に質が良い!)でリアルの本の方が優位ですが、家が狭い日本においては、本棚代わりという点で電子書籍のメリットは大きいはずです。