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岸博幸のクリエイティブ国富論

電子書籍は日本で普及するか?

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第84回】 2010年4月9日
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 先週末に米国でアップルのiPadが発売され、日本のメディアも大きく取り上げていました。多くの人の関心は、iPadもさることながら、それがきっかけとなって日本でも電子書籍が普及するかという点にあると思いますので、今週はこの点について考えてみたいと思います。

電子書籍の本当のメリット 

 報道によると、米国ではiPadの発売初日に30万台が売れ、電子書籍は25万冊のダウンロードがあったようです。iPadブームであり、キンドル登場以来の電子書籍バブルの再燃とも言える状況です。

 それでは、日本でも電子書籍は普及するのでしょうか。結論から言えば、ある程度普及するとは思いますが、爆発的な普及は当分ないのではと思っています。その理由は書籍の価格です。

 米国で電子書籍が人気を集める大きな理由は、価格の安さです。米国ではリアルの書籍の平均価格はハードカバーで26ドル、ペーパーバックで13ドルと非常に高いのですが、それに対して電子書籍の価格は、キンドルの独壇場だった今年はじめまでは新刊書でも10ドル、iPadの参入によって出版社が価格交渉で優位になった後でも13~15ドルと、ハードカバーに比べて圧倒的に安いのです。

 それに対して日本では、新刊書でも米国のハードカバーほど高くないですし、新書や文庫は千円以下の手軽な値段で買うことができます。常識的に考えて、日本で電子書籍が実現したとしても、例えば新書(800円程度)より圧倒的に安くなるとはちょっと考えにくいのではないでしょうか。

 もちろんポジティブな面もあります。日本の若者の本離れにはすごいものがありますが、電子書籍ならウェブサイトを見るのと同様な気軽さで読むようになる可能性はないとは言えません。また、本を読むという観点では、価格や携帯する利便性(日本の本は米国に比べて圧倒的に質が良い!)でリアルの本の方が優位ですが、家が狭い日本においては、本棚代わりという点で電子書籍のメリットは大きいはずです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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