国民負担が生じる軽減税率ではなく
低所得者への「消費税還付」を
国民経済に多大な負担をかける軽減税率。筆者は、この軽減税率に代えて、来年から導入されるマイナンバーを活用し、低所得世帯(たとえば年収400万円以下)に消費税負担分を還付する政策を導入すべきだと思っている。
生鮮食料品を8%の軽減税率にする財源で、300万円以下の世帯に1人当たり年間2万円、300万円から400万円以下の世帯に1人当たり1万円の給付(還付)が可能となる。そうすれば、低所得者の方が消費税負担割合が高くなる逆進性は緩和される。
筆者は連載第77回において、「低所得対策の効果は軽減税率よりも給付付き税額控除の方が圧倒的に大きい」と題して、以下のことを提案した。
第一に、消費者・事業者・税務当局に多大な負担をかける軽減税率に代えて、税制改革法7条に明記されている「給付付き税額控除」をとること。
第二に、その実態は消費税額を低所得者に還付するもので、名称は「消費税還付」とした方がいいこと。
第三に、この制度を実際に導入しているカナダの例を見ると、一定所得(たとえば世帯所得300万円)以下の者に、家族の人数に応じて、基礎的支出に対する消費税額相当分(およそ1人当たり2万円)を定額で給付するもので、決して複雑な制度ではないこと。
そして筆者は、日立コンサルティングの助力を得ながら、わが国で消費税率10%引き上げ時の低所得者対策の具体案として、「世帯年収300万円未満の世帯について、家族1人当たり一律3万円を給付する。300万円から400万円までの世帯については、その半分ということで1人当たり一律1.5万円を給付する」という内容を提案した。これに伴う所要財源は、およそ4600億円である。
今回新たに与党税制協議会で提言された、生鮮食料品の8%軽減税率の減収額は、3400億円となっている。生鮮食料品の対象が多少狭くなったため、昨年の案より多少減収額が少なくなったのである。
そこで財源を合わせるため、消費税還付策を次のように修正した。
「世帯年収300万円未満の世帯について1人当たり一律2万円、300万円から400万円までの世帯については、その半分の1万円を給付する。ただし年金受給者と生活保護者は除く」