リコール騒動に伴う深刻な顧客離れが予想されたものの、3月のトヨタ自動車の米国新車販売台数は前年同月比で約40%伸びた。とはいえ、販売増を支えたのは、同社としては過去最大規模の販売奨励金の増額などに伴う値引きだった。震源地に立つ米国トヨタの幹部は、今後の販売見通しをどう描いているのか。米国トヨタ販売のキーパーソンに聞いた。
(聞き手/ジャーナリスト ポール・アイゼンスタイン)

ドン・エズモンド
(Don Esmond)
米国トヨタ自動車販売上級副社長。フォード・モーターを経て1982年入社。米国人幹部としては、ジム・レンツ・米国トヨタ自動車販売社長と並び古参の1人

―リコール騒動の販売への影響をどう分析しているか。

 率直にいって、今回の問題がトヨタ自動車の米国での販売に長期的にどう響いてくるのかは、現時点ではわからない。1月と2月は、確かに最悪だった。

 しかし、3月の最初の10日間は、前年同期と比べて40%も新車販売が伸びた。2月と比べれば、倍のペースだ。春商戦は米国では通常、3月から始まる。少なくとも復調に向けて幸先のよいスタートが切れたとは思っている。

―しかし、3月の復調は、販売奨励金の増額などに伴う値引きによって牽引された部分が大きい。経営再建中のゼネラル・モーターズ(GM)ほどではないにせよ、一部車種では1台当たり3000ドルもの販売奨励金が拠出されたと聞くが。

 確かに、販売奨励金の規模が、われわれにしては大きくふくらんでいることは認める。ただ、それでも(GMなど)米国のライバルと比べればまだ30%程度は低いのではないか。いずれにせよ、われわれのディーラーがこのような厳しい状況において小売り市場で競争力を維持するためには、特別な販売促進策は不可欠だ。

―GMなど他社は、この機に、トヨタから顧客を奪おうと、販売奨励金の大胆な増額に動いている。トヨタも同じ作戦で対抗するのか。