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岸博幸のクリエイティブ国富論

総合格闘技に見た日本の希望

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第86回】 2010年4月23日
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 読者の皆さんは総合格闘技(MMA: Mixed Martial Arts)というスポーツをご存知でしょうか? 

 昨年の大晦日に魔娑斗の引退試合が行なわれた興行と言えば、分かる方も多いのではないでしょうか。プロレスと違って筋書きがまったくない純粋な真剣勝負のスポーツです。政治が率先して日本をどんどん悪くする中で、先週末、この総合格闘技で日本の希望が見えた気がしましたので、今週はそのことを書きたいと思います。

総合格闘技は日本が世界に誇れる文化

 その興行を行なったDreamという団体のミドル級チャンピオンに青木真也という弱冠26歳の選手がいます。その青木選手が、4月17日に開催された米国の総合格闘技の団体の興行に出場して全米デビューを果たす、しかもその初戦がその団体のチャンピオンとのタイトルマッチということで、総合格闘技が大好きな私は2泊4日の強行軍で青木選手を応援に行きました。

 青木選手は抜群に強い選手で、Dreamという団体名も青木という名前も世界の格闘技ファンの間では有名、と日本で聞いていたのですが、実際に会場に行ってびっくりしました。Dreamの日本での興行が米国で放送されたことはないのに、自分が会場で話した多くの米国人ファンが青木のことを知っていて、日本の総合格闘技のレベルの高さを絶賛するのです。

 私が特に嬉しかったのは、選手個人もさることながら、“日本の総合格闘技”を絶賛してくれたことです。

 ちょっと解説しますと、総合格闘技とは、簡単に言えば“殴る・蹴る+関節技”の競技です。このうち、殴る・蹴るなら欧米の方が強いですが、関節技については、柔道の発祥の地である日本と、その起源である柔術が独自の進化を遂げたブラジルの方が強いのです。

  その関節技で勝る“日本の総合格闘技”が、総合格闘技の本場の米国でも高く評価されていることは、誇るべきではないでしょうか。柔道はスポーツであると同時に、日本の伝統文化です。その進化型である総合格闘技は現代文化と言えますが、それがちゃんと評価されているのです。世界で評価される日本の現代文化は、アニメやマンガなどのポップカルチャーだけではないのです。

 日本の製造業や経済の国際競争力が低下しても、たとえニッチな分野と言えども、こうした様々な文化が世界で正しく評価してもらえる限り、日本の存在価値は認められるはずです。日本のソフトパワーの強さと多様さを改めて実感できました。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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