ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
DOL経営解説委員会~経営の達人が教えるリーダーの教養

自社のファンをどれだけ増やせるか?
企業統治改革「秋の陣」が始まった

川本裕子・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授

川本裕子 [早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]
【第2回】 2015年10月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

成長力の強化は国家的な課題
企業統治改革は「形式」から「実質」へ

9月の金融行政方針では、コーポレートガバナンス・コードについて「形式から実質へ」という方針が打ち出された。経営者が心得るべきポイントとは?

 日本経済の成長力の強化は国家的な課題と言えます。他の先進諸国と比べて低い資本と労働の生産性を高めることなくして、それは実現できません。そのために、企業のコーポレートガバナンスを強化すべきだという問題意識は、広く共有されてきました。

 最近の「スチュワードシップ・コード」と「コーポレートガバナンス・コード」の策定は、「車の両輪」として、これまで掛け声先行だった「日本的経営」の改革が本格化する兆しと考えられます。

 企業統治改革におけるこの秋のキーワードは、「形式から実質へ」です。9月に金融庁が発表した「金融行政方針」は、「企業統治改革については、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードを策定したところであるが、これはゴールではなくスタートである。いまだに形式的な対応にとどまっているとの問題点も指摘されていることから、今後更に「形式」から「実質の充実」へと次元を高める必要がある」として、上場会社全体のコーポレートガバナンスのさらなる充実を訴えました。

 安倍首相が9月29日にニューヨークの投資家たちの前で行ったスピーチでは、実質化の内容が一層明確に打ち出されました。首相は「改革リストのトップアジェンダは、コーポレ―トガバナンスの改革」とし、「形式だけでなく、実効的にガバナンスを機能させることが重要です」「CEOなど経営者の選定プロセスの透明化、株式持ち合いの解消に向けて、チェックする仕組みを新たにつくります」と宣言しています。

 総理も指摘した「経営者の選定プロセスの透明化」と「株式持ち合い解消」は、開示する企業側と投資家側の間の認識ギャップが依然大きく、今後のガバナンスの強化・充実の重要な論点です。

ガバナンス実質化の高いハードル
「経営者の選定プロセス」

 企業統治の実質化の目的は、企業価値の持続的向上です。企業経営のあるべき姿とは、法律を含めたルール順守の下で企業が収益を高め、ステークホルダーである株主や従業員、取引先の満足が得られていることであり、それゆえに企業価値と持続可能性が最大化されている状態です。

 日本の企業に関しては、こうした「あるべき姿」の諸要素の中で、リターンが高くない上に意思決定メカニズムがわかりにくい、という投資家からの不満が根強く、そこにガバナンス実質化が叫ばれる根本原因があるのです。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

川本裕子(かわもと・ゆうこ) [早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授]

東京大学文学部社会心理学科卒業。英オックスフォード大学大学院開発経済学修士修了。東京銀行を経て、1988年マッキンゼー東京支社入社、95-99年のパリ勤務を経て、2001年シニアエクスパート。2004年から現職。これまでに金融審議会委員、金融庁顧問(金融問題タスクフォースメンバー)、道路公団民営化推進委員会委員、総務省参与(年金記録問題検証委員会)、経済財政諮問会議専門委員、国家公安委員などの政府委員や、取引所、金融機関、証券、保険、製造業、商社、IT企業、海外メディア企業などの社外取締役や社外監査役を務めた。日本コーポレートガバナンスネットワーク理事。近書に『金融機関マネジメント』(2015年、東洋経済新報社)など。


DOL経営解説委員会~経営の達人が教えるリーダーの教養

企業経営に携わるリーダーたちには、経営戦略、ガバナンス、リーダーシップ、組織、イノベーション・マネジメント、そして自社を取り巻く経済環境の分析など、経営に関する様々な分野の知識が求められる。当連載では、企業経営に携わる読者に対し、経営学の教授、コンサルタント、実業家など「経営の第一人者」と呼ばれる識者たちが、「特任解説員」として専門分野における重要テーマを解説していく。彼らの提言からは、企業経営に関する深い教養を得られるはずだ。
 

「DOL経営解説委員会~経営の達人が教えるリーダーの教養」

⇒バックナンバー一覧