経営×ソーシャル

「3年目の成長戦略」に見る進化と課題
日本が迎える新たなステージを徹底検証

――湯元健治・日本総合研究所副理事長

潜在成長率2%以上への引き上げが不可欠
新たなステージを迎える「成長戦略」

2015年の成長戦略には「地方の活性化なくして国の成長なし、アベノミクスの成功もなし」と謳われ、地方創生が重視されていることも特徴的だ

 アベノミクス第三の矢、成長戦略の改訂版『日本再興戦略改定2015』が取りまとめられた。アベノミクス1年目の成長戦略は、見事に期待外れに終わり、市場は失望感に包まれたが、その教訓を生かし、2年目には「企業の稼ぐ力」を強化することを前面に打ち出した。

 法人税改革、岩盤規制改革、コーポレートガバナンス改革、GPIF改革など次々と大胆な方向性を示し、市場はこれを高く評価した。今回は3回目となるが、これまでの成果を評価しつつ、今回の成長戦略において進化した点は何か、残された課題は何かについて論じたい。

 今回の成長戦略には、これまでとは異なる新しいステージを迎えるという基本認識が示されている。従来は「デフレからの脱却を最優先し、需要不足を解消すること」に力点が置かれていたが、今回はデフレ脱却が視野に入る中で、「人口減少に伴う供給制約をいかに克服するか」に重点をシフトさせた点が最大の特徴だ。

ゆもと・けんじ
1957年福井県生まれ、80年 京大経卒、同年住友銀行入行、94年日本総研調査部次長兼主任研究員、2004年調査部長/チーフエコノミスト、07年執行役員、同年8月 内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、09年8月日本総研へ復帰、理事就任、12年6月副理事長、現在に至る。主な著書に『スウェーデン・パラドックス』(共著・日本経済新聞出版)、『税制改革のグランドデザイン』(共著・生産性出版)、『税制・社会保障の基本構想』(共著・日本評論社)など

 このため、「アベノミクス第2ステージ」では、①未来投資による生産性革命、②ローカルアベノミクスの推進をキーポリシーと位置付ける。この評価は後に詳細に論じるが、わが国経済の課題がディマンドサイドではなく、サプライサイドにあることは間違いない。

 サプライサイドの成長力を示すわが国の潜在成長率は、少子・高齢化、人口減少、企業の設備投資の停滞とその結果としてのイノベーションの枯渇などを背景に、構造的に低下しており、足下では0.5%(日本総研推計)に止まっている。アベノミクスが目標とする実質2%以上、名目3%以上の経済成長を安定的に実現することは、『骨太方針2015』に盛り込まれた「経済・財政再生計画」の達成にとっても、必須の条件となっている。

 この目標実現には、異次元緩和によって物価上昇率を高めるだけでは不十分だ。それどころか、異次元緩和は実質賃金低下という副作用を招いた。したがって、金融政策への依存は限界にきており、成長戦略によって、潜在成長率を少なくとも2%以上に引き上げることが不可欠の課題となる。

 一般的に、潜在成長率は、①労働投入、②資本ストック、③TFP(全要素生産性、イノベーションによって規定)の3つの要素によって決まる。本稿では、この視点から、過去2回の成長戦略の評価も含めて、2%以上の潜在成長率の実現可能性に焦点を当てて評価を試みたい。

湯元健治[日本総合研究所副理事長]

ゆもと・けんじ/1957年 福井県生まれ、80年 京大経卒、同年住友銀行入行、94年日本総研調査部次長兼主任研究員、2004年調査部長/チーフエコノミスト、07年執行役員、同年8月 内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、09年8月日本総研へ復帰、理事就任、12年6月副理事長、現在に至る。主な著書に『スウェーデン・パラドックス』(共著・日本経済新聞出版)、『税制改革のグランドデザイン』(共著・生産性出版)、『税制・社会保障の基本構想』(共著・日本評論社)など。


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