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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

三井不動産、VW、東芝で
商魂が良心に勝った心理とは

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第36回】 2015年10月28日
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トップの責任逃れが目立つ
昨今の企業不祥事

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

まだきちんとした調査が終わる前なのに「下請けのせい」との発言が目立つ、三井不動産の傾斜マンション問題。企業不祥事には、幾つもの共通点があるものだ Photo by Satoru Okada

 大企業の不祥事が続いている。東芝の不正会計問題、フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題、そして三井不動産の横浜のマンション傾斜問題と、大きな不祥事が立て続けに起こっている。それ以外にも、食品関係企業の産地偽装問題は、相変わらず後を絶たない。

 これらの不祥事が起こるたびに指摘されるのが、「バレたら会社の屋台骨を揺るがす事態になるのはわかっているのに、なぜ、そんなことをするのか」という点だ。

 大抵の場合、その原因は「グローバル化によるライバルとの過熱競争」「大企業病」というレッテル貼りで終わってしまうことが多い。そして「本当に何が起こったのか」が検証されないまま問題は処理され、そして年月が経つと同じことが起こってしまう。

 この「本当の原因」を調べるためには、当事者たちからの十分な聞き取りと精査が必要なのはいうまでもないが、大抵の場合はうまくいかない。当事者は、特に自分に非のある場合には、それを話したがらないし、自分の非を話そうとする者は、時に非合法な手段で口止めをされることもある。そのため、全貌はなかなか明らかにならない。

 しかし、さまざま不祥事を比較し、そこに共通するファクターを洗い出すことで、こういった不祥事が「起こりやすい」土壌を特定することは、ある程度可能だろう。そして、ここ最近の不祥事に共通するファクターとして目立つのが「トップの責任逃れ」である。

 VWの会長は不祥事発覚後、「これは一部の社員によるもの」と主張し、自身の関与を否定している。だが、さまざまな状況証拠を見る限り、その主張はにわかには信じがたい。特に不正プログラムは、非常に入念に作られており、問題の起こった米国だけでなく、他の国でのテスト走行の「くせ」をも自動的に検出できるようにカスタマイズされている。これは、下請けのボッシュ社が納入しているが、これだけ精巧なものを「一部の社員の独断」でできるとは到底思えない。

 VWが検出テストを不正にパスすることを目的として、発注したと考えるのが普通だろう。ボッシュがその目的を知っていたかどうかは不明とされているが、ボッシュ側はVW社宛に「このプログラムは不正使用が可能なので気を付けてください」との警告文を送っている。これにより、ボッシュ側は「不正の意図はなかった」と主張している。

 だが、第三者からみると、ボッシュはVWのせいにしようとし、VWはボッシュのせいにしようとし、CEOは一部の社員のせいにしようとする、という「責任のなすりあい」に思えてしまう。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

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