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ニッポン 食の遺餐探訪

地方スーパーのカリスマ「福島屋」はなぜ大手に負けないか

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第36回】 2015年11月4日
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羽村にある福島屋本店 
Photo by Naoya Higuchi

 立川で青梅線に乗り換えて20分あまり、羽村駅を降りると都会でも田舎でもない景色が広がっている。高い建物はあまりないが、通りにあるビジネスホテルを通り過ぎ、10分ほど歩いた場所に福島屋というスーパーがある。

 福島屋についてはあらためて説明する必要などないのかもしれない。テレビなどのメディアでも多く取り上げられる人気のスーパーで「食と農を商でつなぐ」という方針で全国から商品を集め、安売りをしない、チラシを撒かない、という独自の経営で、創業40年間黒字を続けている。大手の寡占化が進み、中小のスーパーが苦戦を強いられるなか、生き抜いてきた店だ。

 本店は実際に訪れるとテレビ画面などで見るよりもずっと小さい。見たところ特に目立った外観のない、どちらかというと古びたスーパーだけど、店内に入ると違いがわかる。

 青果売り場には旬の野菜や果物が並び、生産者の顔写真や現場の写真、説明書きのPOPがある。魚売り場、肉売り場を見て、全国から集められた調味料、加工品のコーナーをまわる。実際に買って食べてみるとどれもおいしいが、整然と陳列された商品を眺めているだけで楽しい。見て廻るだけで楽しいことが店には大事と納得した。

地方スーパー、生産者、食品メーカーが
福島屋から学ぶ「福島塾」

福島さんはちょっと雑誌の名編集長のような雰囲気がある。スーパーマーケットの売り場も一つのメディアなのかもしれない

 先日、見学する機会に恵まれた『福島塾』は歴史ある経営誌『商業界』編集長の笹井清範さんの働きかけで設立された、東京・羽村市のスーパーマーケット「福島屋」の福島徹さんを中心とした勉強会である。

 塾生は地方スーパーマーケットの経営者だ。いわずもがな地方スーパーの経営環境は厳しく、帝国データバンクの調べでは年間約300~350あまりの企業が倒産する現状にある。そうしたなかで『「地域の食を守る』」という役割を果たそうと努力している経営者が集まり、福島さんを囲んで学びあうことで、現状を変えていけるのではないか。そうした集まりが回数を重ねるなかで、生産者、食品メーカーの経営者たちも加わり『「生産者、販売者、生活者の三位一体の食品作り』」を目指すものに発展している。

 この日の会場は大日本印刷五反田ビルのホール。南は九州、北は北海道からと全国から50人あまりの参加者が集まっていた。参加している生産者や食品メーカーの製品は一流どころで、活躍されている方ばかりだ。塾頭を務める下仁田納豆の南都隆道社長(下仁田納豆については以前に本連載でもとりあげた)の挨拶で福島塾ははじまる。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

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