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ヒット商品開発の舞台裏

トヨタも利用!“ものづくり”中小企業マッチングサービス

夏目幸明 [ジャーナリスト]
【第11回】 2015年11月9日
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工場はおろか、ラインの1本も持っていないのに、日本のものづくりを支えるベンチャーがある。その名は「リンカーズ」。特筆すべき技術がある中小と大手メーカーをつなぐ革新的システムを世に出した企業だ。

1年かけても発注先が見つからない!
メーカーの開発現場が抱える構造的課題

 大手メーカーの開発現場では、よい発注先に恵まれることが、計画の成否を分けることがある。具体的には「さびにくく、かつ軽い素材を複雑な形に加工したい」など難易度が高いニーズがあった時、これを実現できる発注先を知っているかどうかが、開発の鍵を握るのだ。

 こんな時、大手メーカーに依頼され、受注先企業を探すのがリンカーズだ。前田佳宏社長は、2015年の日経イノベーター大賞の優秀賞を受賞。日本のものづくりの現場を支える、革新的なシステムとして、注目を集めている。

1年かけても納得のいく発注先が見つからないことがある、メーカーの開発現場。リンカーズのサービスを使うことで「50社も候補が見つかった」と驚きの声が上がる

 「日本に、いわゆる“ものづくり”を請け負う企業は約43万社あり、中でも特筆すべき技術を持っている企業は数万社です。弊社は、この数万社の技術情報を引き出すことができます。だから、メーカーさんのご依頼のほとんどに応えられるだけでなく『納期が最短』『最安値で受注してくれる』など、最もニーズに適った企業を選ぶことも可能です」

 顧客には、トヨタ自動車やパナソニックなど、日本を代表する大手メーカーも名を連ねる。トヨタやパナソニックであっても、優秀な技術を発掘することは、なかなか大変な作業なのだ。

 リンカーズはメーカーからの依頼を受けると、初めにどのような技術が必要か詳細にヒアリングし、全国の“コーディネーター”に向け極秘情報として送信する。日本各地には、自治体の産業振興課や半官半民の産業活性化協会などが存在する。そしてこれら組織には、地元の中小企業の技術を知り、大企業との間を取り結ぶコーディネーターが所属している。その数、全国で約1300人。この多数のコーディネーターが、リンカーズ発の情報に触れ、「ならば、この企業はどうか」と推薦してくれるのだ。

 「大手メーカーからは『1年かけても発注先が見つからなかったのに、50社も推薦があるとは』などと驚かれることが多いですね。メーカーは弊社からの推薦を受けると、受注金額や納期などを元に発注先の絞り込みを行ない、最後は面談などをして発注先を決定します。弊社のビジネスモデルは、受注先企業を探す時に手付金をいただき、マッチングが完了したら手数料をいただく、というもの。その後はメーカーと受注先企業の2社間でお取引いただいています」

 前田氏は大阪大学工学部の出身。リンカーズとは無関係だが、彼の父も東証一部上場企業を一代で育て上げた起業家だ。前田氏は父の跡は継がず、大学卒業後、稲盛和夫氏への共感もあって京セラへ入社した。その後、彼は「日本のものづくり全体を盛り上げたい」と大志を抱き、野村総研でのコンサルタントを経て独立・起業した。

 「これが12年4月のことです。当初は“世界初の口コミネットワーク”を作ろうと考え、SNSのようなウェブサイトを立ち上げました。まず、自動車、電機、医療など様々なカテゴリーがあり、仮に自動車なら、ピストンピン、タイミングベルトなど、非常に細かい下部カテゴリーがあるサイトです。そして、ここに登録された業界関係者同志がfacebookのように、さまざまなテーマに沿って議論を行えるようにしていました」

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夏目幸明[ジャーナリスト]

1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店に入社。その後、雑誌記者に。小学館「DIME」の『ヒット商品開発秘話 UN.DON.COM』や講談社「週刊現代」の『社長の風景』などを連載中。著書に『大停電(ブラックアウト)を回避せよ!』(PHP研究所)などがある。


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よい商品やサービスが必ずしも売れるわけではなく、ヒットするには何かの仕掛けが必ずある。ユニークな技術から、消費者の心をつかむマーケティングまで、ヒット商品・サービスの秘密に迫る。

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