ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

不倫相手の側近の話しか聞かない
社長の「裸の王様」化が招いた組織の崩壊

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第37回】 2015年11月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

何でもできるスーパーマン社長を
補佐した“番頭”専務の隠れた腕前

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 ある中小企業で実際に起こった例だ。いま評判の「下町ロケット」ではないが、ある分野の研究開発を中心としたイノベーションを売りにした会社だった。ドラマ同様、社長も元研究者で、相当なアイデアマンだった。基本的には、社員は社長の手足となって、サポートし、研究アイデアを製品に結び付け、学会発表や営業活動を行っていた。

カリスマ社長と、有能なナンバー2のおかげで急成長していたはずなのに…。崩壊のきっかけは、なんと社長と女性役員の不倫だった!

 社長が就任してから、業績は常に前年度比で2倍になった。社長はアイデアマンであるだけではなく、カリスマ性もあって、なんでもできた。

 部下のできない仕事をカバーし、営業をやらせても、どの営業部社員よりも仕事を取ってきた。会社は元々、研究者時代の部下だったものも含めた5人で始めたが、業績が好調なのに伴い、6年後には40人近くを抱えるようになっていた。

 社員は全員、社長の実力とカリスマ性を評価していたが、時に情熱的すぎる社長に辟易したり、距離を置きたがる社員もでてきた。あるいは、社長があまりにも凄いため、「恐れ多くて何も言えない」といった社員もおり、だんだんと創業当時の「全社一丸」のような状態を作ることが難しくなった。

 創業時代から社員が20人未満のときは、何をするにも皆が一緒にやり、社長の目も行き届いていた。社員のモチベーション向上から人間関係の面倒まで、社長の采配でうまくいっていたのだ。

 だが、大所帯になってくるにつれ、社長の目も行き届かなくなった。創業時代からの5人組の1人である専務は、そのことにいち早く気づき、すぐに自ら総務部長を兼任。社員一人ひとりから定期的に聞き取りを行って、社長に伝えることにした。聞き取りといっても、フォーマルなものではない。日常の会話や飲み会での、ちょっとした不満や愚痴など、組織に関係のあることならば、すべて書き留めておいて、必要なものを役員会の議題に挙げたのだ。

 重要なのは、それらの愚痴や不満が自分や社長に向けられたものであっても、しっかりと聞き取りを行ったことだった。面と向かって言えない社員については、その社員と仲のいい他の社員を介して聞き取りを行い、他の役員たちにも、積極的に社員から情報を吸い上げるように指示した。

次のページ>> 凄腕専務の退社で暗転
1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧