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位置情報の鉱脈を掘るソーシャルメディア
フォースクエアに買収話が集中する訳

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第95回】 2010年5月19日
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 あるスポットに誰よりもたくさんチェックインしたユーザーは、「メイヤー(市長)」になる。メイヤーにはさまざまな特典を与えることで、フォースクエアはユーザーを喚起しようとしており、先頃スターバックスが特定の店舗のメイヤーに1ドルの値引きサービスをするキャンペーンを始めた。バーチャル世界でユーザー同士が競った結果、現実世界で特典がもらえるという仕組みだ。

 少々分かりにくいが、フォースクエアは、ソーシャル・ネットワークにゲームやロケーション(居場所)という複数のレイヤーをかけて、ユーザーを特定の行動にロックインするようなサービスと言うことができる。それによって、あるローカル地域で商売をする店舗やビジネスにとっておいしい「潜在顧客グループ」が形成されるということなのだ。

 フォースクエアは、2009年3月に創設されたばかりで、まだ135万ドルのエンジェル資金を受けた新興企業に過ぎない。だが、創設したのは、類似したサービスであるドッジボールをグーグルに売却したデニス・クローリー。ツイッターの創設者、ディッグの創設者など、同じように若いアントレプレナーたちが、エンジェル投資家として名を連ねている。

 それゆえに期待は高く、すでに大手ケーブルTVやメディア会社が次々に提携し、先頃はヤフーが1億2500万ドルで買収話をもちかけた(買収は成立せず)。

 メディアの中には、コンテンツ関連で提携する例もあるが、すべては、ソーシャル・ネットワークをうまく利用した潜在顧客形成に目を付けてのこと。顧客をまとめて売れば、ローカル・ビジネスからの広告収入にもなる。

 ローカル広告は、広告界のこれからの金脈とされているが、それを発掘するのは誰か。もはやこれまでのようなメディアではないとすれば、フォースクエアのようなちょっとひねった、複雑なつくりのソーシャル・ネットワーク・サービスとなるのかもしれない。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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シュンペーターの創造的破壊を地で行く世界の革新企業の最新動向と未来戦略を、シリコンバレー在住のジャーナリストがつぶさに分析します。

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