前回は、確定拠出年金(以下、DC)の運用におけるコアとなる債券と株式について、配分比率の決め方や役割についてお話ししました。配分比率を決めるといってもいきなりは難しいので、まずはバランス型の投資信託の配分比率を真似てみるのが手っ取り早い方法になります。また、株式は資産成長の原動力(エンジン)、債券は安定装置(スタビライザー)といった役割を持たせたうえで、この役割に沿って運用していくことも大切なのです。例えば、高いリターン欲しさから安定装置の債券の中でハイイールド債券などのハイリスク・ハイリターンの資産に投資すると、ポートフォリオ全体が想定よりも高いリスクにさらされてしまうので注意が必要です。

 今回はこの役割を意識したうえで、どのように株式や債券に投資を行うべきかについてお話しします。

“イメージしやすいから日本株式中心”は正しいのか

 一般的に「初心者はイメージしやすい国内資産を中心に投資すべき」とアドバイスされることが多いように思いますが、私はこのアドバイスは間違っていると思います。理由はシンプルで、日本株式と外国株式を比べたときに、日本株式のリスクが大きいからです。長期(*1)で見ると外国株式(含む日本、円建て)のリスク(年率標準偏差。以下同じ)が約17%であるのに対して、日本株式のリスクは約20%にもなります。新興国はリスクが高いと思われがちですが、新興国を含む外国株式で見ても、リスクは約18%と日本株式より低くなっています。またリターン面で見ても、日本株式はやはり劣勢です。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB(*2)」)の推計モデルによると、向こう3年の日本株式の予想リターンは5.7%であるのに対して、外国株式は6.5%となっています。つまり、日本株式に多く投資をすることは、より高いリスクでより低いリターンを狙うことになり、投資が非効率になりやすいのです。

*1 ここでは、1988年1月から2015年7月までの期間で算出。日本株式はTOPIX(東証株価指数)、外国株式(含む日本、円建て)はMSCIワールド指数、新興国を含む外国株式はMSCIオールカントリー・ワールド指数、日本債券は野村BPI、外国債券(含む日本、円ヘッジ)はシティ世界国債指数(含む日本、円ヘッジ)。
出所:イボットソン・アソシエイツ

*2 アライアンス・バーンスタインおよびABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。