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白鵬の「猫だまし」は横綱がやってはいけない技だったのか?

相沢光一 [スポーツライター]
【第373回】 2015年11月24日
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 日本相撲協会のトップ、北の湖理事長が亡くなった。

 最近は入退院を繰り返していたと聞いていたし、テレビで見た容貌が妙に痩せていたので気になっていたが、急逝の報を聞いたときは驚きを覚えた。「憎らしいほど強い」といわれた現役時代の姿が焼きついているからだ。

 相撲をとるために生まれてきた、と思わせる力士だった。腰が低いあんこ型の体型。それでいて抜群のスピードがあり、立ち合いで相手をがっちりと受け止めた後、有利な体勢に持って行く器用さも兼ね備えていた。「憎らしいほど」といわれたのも、圧倒的な強さに加え、勝った後も決して表情を崩さない厳しい立ち居振る舞いがあったからだろう。もちろんアスリートが長生きできるとは限らないが、あの気力充実した姿と死が、なかなか結びつかないのだ。

 場所中に亡くなったのも、相撲とは切っても切れない縁があったからだろう。

場内の好角家からは痛烈なヤジも
ところがネットでは賛否両論

 その北の湖理事長が最後に呈した苦言が、横綱白鵬が見せた“猫だまし”に対するものだった。10日目の栃煌山戦。白鵬は立ち会いで突進してくる栃煌山の目の前で両手をパチンとたたく猫だましをした。驚いた栃煌山は目をつぶる。白鵬は左に体をかわし、栃煌山は西の土俵際に。踏み止まった栃煌山が振り返ると再び猫だまし。その結果、優位に立った白鵬は簡単に得意の右四つになり、難なく寄り切った。

 猫だましは格下、それも小兵でまともに相手とぶつかったら勝ち目がない力士が、一か八かで行う奇襲戦法といわれている。それを横綱がやったのである。

 福岡国際センターに来場した好角家からは「横綱がそんなことするんか!」、「堂々とせい」といった痛烈なヤジが飛んだ。

 当然、北の湖理事長はおかんむり。「前代未聞、あれで負けたら横綱の品格にかかわる。横綱としてやるべきことではない」と語ったのだ。また、現役時代は小兵力士して猫だましはもとより“八艘跳び”などあらゆる技を繰り出して戦った舞の海秀平氏は「私はどうしても勝てない相手に勝ちたくて猫だましをやった。白鵬は話題づくりとして、自分流のファンサービスとしてやったのかもしれないが、横綱としては、そんなことをせず、立ち合いで相手をしっかり受け止めてほしかった」と一定の理解を示しつつも批判した。ということで、白鵬の行った猫だましは非難囂々になるかと思われた。

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相沢光一 [スポーツライター]

1956年埼玉県生まれ。野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。そのためオリンピックイヤーは忙しくなる。著書にはアメリカンフットボールのチーム作りを描いた『勝利者』などがある。高校スポーツの競技別・県別ランキングをデータベース化したホームページも運営。 「高校スポーツウルトラランキング」


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