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会社員のストレス問題は、ここ数年の間にことさら論じられるようになった。そしてそのストレスは、働きざかりの社員の離職を生んでしまう。だが、そういった離職は、生涯のキャリアを考える上で“致命傷”になる可能性も低くない。そしてその致命傷が、下流中年のきっかけをつくるのだ。
離職のキズに悩まされている人は他にもいる。Nさん(38歳)は30代前半でうつを発症し、最終的に中途採用で入った企業を退社してしまった。その後、時間をかけて復帰を目指したが、「なかなか雇ってくれる会社は見つからなかった」という。
結局、彼はアルバイトとしてカラオケ店に勤め、そこから社員になった。一安心かと思いきや、「給料は契約社員のようなもので、同年代と比べるとかなり低い」という。かといって再転職するのはさらに難しく、「切り詰めてやっていくしかない」と憂いている。
親の介護や子どものニート化
思わぬ家庭問題で下流化することも
堅実に働いている人でも、予期しなかった原因により下流化してしまうケースはある。その1つが「親の介護」だ。
金属メーカーの営業担当であるHさん(46歳)は、独身で75歳の母親と2人暮らしをしている。姉は結婚して地方に嫁いでおり、Hさんが母の面倒を見ている状態だ。
70歳を過ぎるまでは元気だったHさんの母だが、病を患ったのを機に、めっきり活力をなくしてしまった。用を足すにもHさんが面倒を看なければならないこともあって、いわば介護が必要な状態となったのである。
Hさんは未婚のため、自分の妻に母のサポートを任せることはできない。姉も遠方に住んでおり、まだ小学生の子どもがいる。彼は仕事を続けながら母を看ていたが、それも難しくなってついには会社を辞めてしまった。
Hさんは「このまま仕事を続けるのは厳しいので仕方なかったです」と語る。しかし、今の生活に入ってからもう3年が経とうとしており、貯金を切り崩して生活している状況。母親を施設に入れるのもためらわれ、「自分の生活を見直すしかない」と話している。
親の介護だけでなく、予期せぬ「子どもへの援助」が下流中年を生むケースもある。Aさん(49歳)は2人の子を持つ父親で、製造会社に勤務するサラリーマンだ。
高校卒業後にすぐ社会に出たAさんは、「子どもを大学に入れるとこんなにお金がかかるなんて思わなかった」と言う。