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人民元のSDR採用でも中国リスクは変わらない

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第406回】 2015年12月8日
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円、ポンドをしのぐ
国際通貨となった人民元

 11月30日、IMF(国際通貨基金)は理事会で、予想通り中国人民元をSDR(特別引き出し権)に採用することを正式に決定した。今回の決定によって、人民元はドル、ユーロ、円、ポンドと並ぶ国際通貨の地位を勝ち取ったことになる。

 実際の採用は来年10月以降で、人民元はSDRの構成比の中で、ドル(41.73%)、ユーロ(30.93%)に次ぐ第3位=10.92%を占め、円(8.33%)とポンド(8.09%)をしのぐ国際通貨となる。

 IMFは今回の決定と同時に、中国政府に対して人民元の国際化へ向けた改革を推進することを求めた。現在でも、人民元の取引には中国政府の厳しい制限が課されている。また、中国国内の人民元とドルへの交換は、中国人民銀行の設定するレートが使われることになっており、自由な取引が保障されているとは言い難い。

 そうした状況にもかかわらず、IMFが人民元のSDR採用を決断した背景には、中国経済の規模が拡大し、世界の貿易に占める割合が飛躍的に増えたことがある。IMFとしては、人民元を国際金融のルールの中に入れる方がコントロールしやすいとの読みもある。

 問題は、IMFの決定を受けて、中国政府が人民元改革を本気で推し進める意図があるか否かだ。金融専門家の中には、「今回の決定で、政府がすんなり改革を進めるとは考えにくい」との悲観的な見方がある。

 中国政府としては、国際通貨のお墨付きを取得したことで一種の達成感を持つ可能性が高い。やみくもに人民元の自由化を進めて、海外からの投資資金が逃避するような事態は避けたいはずだ。人民元改革の速度は鈍化する可能性が高いと見る。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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