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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

賦課方式なら年金の所得代替率はわずか30%、
人口減少社会における危機の本質

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第74回】 2010年6月12日
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 しばしば、「公的年金は国庫負担が与えられるので、私的年金より有利だ」と言われる。この説明ははたして正しいだろうか?

 これを見るために、純粋な賦課方式をとった場合に年金がいくらになるのかを、つぎのように考えてみることにする。

 簡単化のため、22歳から65歳までの43年間、保険料(保険料は標準報酬の18.3%とする)を支払い、65歳から平均余命である18.5年間年金を受け取るとする。配偶者が本人の半額の遺族年金を5年間(65歳における平均余命の男女差)受け取るとすると、本人が21年間受給するのと同じことになる(ここでは、20歳から21歳までの国民年金加入は無視する)。

 まず、経済成長率がゼロであり、各年齢層の人口が同一でnである場合を考えよう。1人当たり標準報酬をyとすれば、年間の保険料総額は0.183×43yn=7.87ynであり、これを全体で21nの受給者で分けることになるので、1人当たりの受給額は0.375yとなる。つまり、年金の所得代替率は37.5%である。

 以上では国庫負担を考えなかったが、現実には、給付総額の約37%に当たる基礎年金に対して、2分の1の国庫負担金が与えられている。

 この場合、1人当たりの年金額をwとすれば、国庫負担総額は0.185×21wn=3.885wnである。したがって、保険料収入と国庫負担の和は7.87yn+3.885wnであり、これが給付総額21wnに等しくなる必要がある。これを解けば、w=0.4598y。つまり、所得代替率は46%になる。

 財政検証においては、最終的な所得代替率をほぼ50%のレベルにすることを目的としている。以上で行なった計算からすれば、これは静態人口における純粋な賦課方式(積立金がゼロである財政方式)では実現できない高い水準であり、人口が増加する社会においてのみ可能なものであることがわかる。

所得代替率50%の年金のためには、
0.5%程度の人口増加率が必要

 以上では、静態的な人口構造を考えた。人口が増加する社会では、これより高い所得代替率を実現することができる。

 加入者(保険料支払い者)総数をA、受給者総数をBとすると、保険料収入と国庫負担の和は、0.183yA+0.185wBであり、これが給付総額wBに等しくなる必要がある。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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