続したくない土地は「国に渡せる」けど…最大79万円もかかるって本当?
相続は誰にでも起こりうること。でも、いざ身内が亡くなると、なにから手をつけていいかわからず、慌ててしまいます。さらに、相続をきっかけに、仲が良かったはずの肉親と争いに発展してしまうことも……。そんなことにならにならないように、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)の著者で相続の相談実績4000件超の税理士が、身近な人が亡くなった後に訪れる相続のあらゆるゴチャゴチャの解決法を、手取り足取りわかりやすく解説します。
本書は、著者(相続専門税理士)、ライター(相続税担当の元国税専門官)、編集者(相続のド素人)の3者による対話形式なので、スラスラ読めて、どんどん分かる! 【親は】子に迷惑をかけたくなければ読んでみてください。【子どもは】親が元気なうちに読んでみてください。本書で紹介する5つのポイントを押さえておけば、相続は10割解決します。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

話がまとまらない家族と
“仮の登記”で一時回避する方法とは?

遺産分割協議がまとまらないときは?
国税 家族間で遺産分割協議がまとまらない可能性もあります。その場合も3年以内に登記しないといけないのですか?
前田 遺産分割協議が難航するなどして登記期限に間に合わない場合は、同時に新設された「相続人申告登記」の手続きを利用する方法があります。
自分が相続人であることを法務局に申告して、そのことを示す戸籍謄本を出せば、単独で相続登記ができるというものです。この手続きをしておくと、3年以内の相続登記の申請義務を果たしたとみなされ、10万円以下の過料を一時的に免れることができます。
相続人申告登記はあくまで「仮」対応
無知 一時的に、というのは?
前田 相続人申告登記はあくまで仮の登記なので、本来の登記はいずれしなくてはいけません。
それに、相続人申告登記をしただけでは、その不動産の売却などはできません。そのため、相続人申告登記をしたあとに、遺産分割協議で不動産を引き継ぐ人が確定したら、その日から3年以内に相続登記をしなければなりません。これを怠ると、やはり10万円以下の過料が科されます。
いらない土地は「国に引き取ってもらう」制度もある
無知 前に前田先生がおっしゃっていたように、誰も相続したくない不動産があると、話がまとまりませんよね。それでも罰金がつくのはちょっとひどいような……。
前田 いらない土地を国に引きとってもらえる制度が2023年4月27日にスタートしたので、これも覚えておくといいです。
この制度を使えるのは、相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により、土地の所有権を取得した人に限られます。自分で買った土地や、道路として使われている土地、崖のある土地などは認められません。また、抵当権の設定や争いがない更地であることも条件です。
国有化手続きの流れと費用
国税 借金の担保になっていたり、土地に建物が建っていたりすると使えないのですね。簡単に手続きの流れを教えてください。
前田 まずは法務局に承認申請をします。その後、審査が行われ、問題がなければ承認されます。承認を受けたら、負担金を納め、土地の所有権が国に移ります。
国有化の費用は?
無知 費用はいくらくらいかかるのですか?
前田 手数料は土地一筆あたり1万4000円です。あとは、国の管理費用の一部を負担する必要があり、国有化する土地の状況に応じてかかります。たとえば市街化区域にある200㎡の宅地であれば、負担金は79万3000円となります。
無知 けっこう高いですね。
前田 そう思われるでしょうが、国有化の手続きをせずに所有し続ければ、固定資産税などのコストがかかるわけですから、こればかりは仕方がありませんよ。
不動産の名義変更は自分でできる? …法務局の窓口で登記申請できる
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。