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米国で最もイノベイティブなメディアと呼ばれる
グラムメディアに学べること

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第99回】 2010年6月21日
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 サブプライム惨禍もいまだ生々しく残る米国で、「ブランド」だ、「IPO」だと、景気の良い話を連発している企業がある。ファッションやセレブ、化粧品、旅行、料理、ラグジャリーといったスタイル分野のコンテンツに強みを発揮しているメディア企業、グラムメディア(Glam Media)がそれだ。

 ファッション誌などがここ数年、売上げが伸びず苦闘しているのとは対照的に、グラムメディアは各方面から投資資金を集め、売上げを順調に伸ばしている(IPOも間近と見られている)。米国の有力誌「ファストカンパニー」からは今春、“世界で最もイノベイティブなメディア企業”に選ばれた。筆者の住む米国ではスタイル・コンテンツサイトとして不動の地位を築こうかという破竹の勢いなのだ。

 ネット上では、グラムメディアの設立時期について、様々な情報が流れているが、その母体企業まで遡れば正しくは2003年のことらしい。このグラムメディア、ごく普通のメディアに親しんできた人間からすると、いったい何者なのか実に分かりにくい。

 グラムメディア自身の説明によると、「バーティカル・メディア」のパイオニアだという。バーティカルとは、スタイルというテーマを軸にして、トップ・サイトからブログ、ツイッターにいたるまであらゆるものをここに集めて見せましょう、ということだ。

 英語版のglam.comを見てみた。そこには、グラムメディアが自社で作成したコンテンツ、女性サイトや女性雑誌などのパートナー・サイトのコンテンツ、同じようなテーマに絞って発信し続けている個人のブログやツイッターなどが混在している。女性版のglam.comに加えて、男性版のbrash.comなどを合わせ、またドイツや日本などの国際版も含めて、ここに何らかのかたちでつながっているサイトは何と1400以上ある。いわばコンテンツのネットワークとも言える存在だ。

 これまでメディアと言えば、自社のブランドに固執し、他のメディアとの差異化が最も大切なポイントだった。消費者に雑誌を買ってもらい、ウェブサイトに来てもらい、そこで購読料を徴収して、広告でも稼ぐ、というのが従来のモデルである。ところが、今やインターネットはそんな“ひとりぼっちの戦い”では太刀打ちできないほどに拡大し、消費者の注意力も同じように拡散している。彼らのマインド・シェアを勝ち取るためには、もっと大掛かりな仕掛けが必要なのである。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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