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田中均の「世界を見る眼」

2016年に発火懸念
日本を取り巻く七大地政学リスク

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第52回】 2016年1月20日
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日本と日本企業が
認識すべき地政学リスク

年明け早々、北朝鮮の「水爆」実験が日本を揺るがした。写真は2016年新年の演説を行う金正恩第一書記
Photo:KFA

 今年は山積するリスクが火を噴くことが懸念される年となりそうである。既にサウジアラビア・イラン関係の緊張や北朝鮮による「水爆」実験など、潜在リスクが表面化しつつある。

 先日、米国のコンサルティング会社ユーラシア・グループが今年の世界の十大リスクを発表した。グローバルな業務展開をしている日本企業も世界の地政学リスクに敏感でなければならない。

 同時に、日本を取り巻くリスクには日本特有の地政学的要因もあり、世界のリスクとは異なる面があることにも留意したい。ここでは日本の目から見た地政学リスクの評価を行いたいと思う。もちろん、リスクを認識したうえで、それが現実のものとならないよう対応を考えていくことこそが重要である。

リスク1:米国の指導力の一層の低下
その行方は他の世界のリスクも左右する

 今日の国際情勢の流動化を生んだ最大の要因は、米国の対外姿勢の変化であろう。ブッシュ前大統領は軍事力を前面にかざした対外政策を追求したが、アフガンとイラクでのあまりにも長期にわたった戦争の結果、多大の人的・財政的コストと米国社会に凄まじい疲弊感を生み、オバマ政権の対外姿勢は大きく変化した。

 オバマ政権は関係国との協調に基づく外交を優先し、キューバとの国交回復やイランとの核合意などの具体的成果を生んだ。その反面、ウクライナ問題やシリア問題、ISとの対峙などで、本格的な軍事介入を躊躇する姿勢が力の空白を生むこととなり、情勢の流動化に繋がっていることも否定できない。これは米国の力の衰えと言うより、米国の指導力の低下を印象付けることとなった。同盟国日本にとっては深刻な問題である。

 本年、米国は大統領選挙のキャンペーンに明け暮れることになるが、ポピュリスト的で排外的とも言える主張が多くの人々の支持を得ている。共和党サイドでは、従来は最終的に候補者として選ばれることにはならないと考えられていたトランプ候補の勢いが未だ衰えていない。民主党サイドでも一時圧倒的な優勢を伝えられていたクリントン候補と、極めてリベラルな主張を掲げるソンダース候補の差が小さくなっていると伝えられる。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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