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田岡俊次の戦略目からウロコ

米中に逆らって水爆実験しても、
北朝鮮は潰されないという皮肉

田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]
【第61回】 2016年1月14日
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 北朝鮮は1月6日午前10時29分頃、第4回の核実験を咸鏡北道・豊渓里(ハンギョンプクド・フンゲリ)の核実験場で行い、水素爆弾の実験に成功した、と発表した。一方、日本の気象庁の地震計では2013年2月12日の第3回核実験と同等のマグニチュード5.1の振動しか記録されておらず「本当に水爆だったのか」との疑問が出ている。

 だが北朝鮮のように比較的小さい国が自国領内で核実験するには爆発力を抑える「威力制御」をする必要があるのは明らかで、爆発の規模で水爆か否かを推定するのは無理がある。また従来の実験では中国等に事前に通知して行っていたが、今回は無通告で行い、各国もその兆候をつかめていなかったのはなぜか、などの謎に迫ってみたい。

水爆実験で威力を小さく
制御することは可能

北朝鮮の金正恩第1書記 Photo:AP/AFLO

 原爆を作るにはウラン235で約13kg、プルトニウム239なら約4kgが必要で、それを使うと威力は自ずと20Kt(キロトン・爆薬2万t相当)程度になる(広島型は13Kt、長崎型は23Ktとされる)。このため当初は「原爆の威力はこれ以上大きくも、小さくもできない」と言われた。

 だが1950年代には戦闘爆撃機が積める程原爆は小型化し、敵と味方の戦線が接近した地点で、低空飛行で投下する「戦術攻撃」に使ったり、砲弾にすることも考えるようになったから、味方に被害が及んだり投下した航空機が爆発に巻き込まれないよう、威力の低い原爆を作る必要が出て、連鎖反応が進む途中で一部の核物質を飛散させ、威力を下げる威力制御の技術が生まれ、1Kt(爆薬1000t相当)の物も作られた。

 北朝鮮は2006年10月9日の第1回核実験の前に、中国に対し「威力4Ktで実験する」と通告していた。普通なら20Kt程度になるところ、その5分の1の威力で計画していたから、威力制御の技術を持っていたと考えられる。この実験では実際の威力は1Kt程度だった様で、初めての実験だけに制御が少し効きすぎたのだろう。

 一方、米ソの冷戦が始まると原爆の威力を高める技術も進み、100Kt(同10万t相当)の原爆も開発されたが、1952年11月に米国は原爆とはケタ違いの威力を持つ水素爆弾の実験に成功した。史上最大の威力を持った水素爆発装置はソ連が1958年10月に北極圏のノバヤゼムリア島で実験したもので威力は58Mt(メガトン)に達した。爆薬5800万tに相当し、広島型の約4500倍の威力だったが移動ができず実用にはならなかった。

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田岡俊次 [軍事ジャーナリスト]

1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。


田岡俊次の戦略目からウロコ

中国を始めとする新興国の台頭によって、世界の軍事・安全保障の枠組みは不安定な時期に入っている。日本を代表する軍事ジャーナリストの田岡氏が、独自の視点で、世に流布されている軍事・安全保障の常識を覆す。さらに、ビジネスにも役立つ戦略的思考法にも言及する。

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