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ぼくらの仮説が世界をつくる
【第1回】 2016年1月25日
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佐渡島庸平 [株式会社コルク代表取締役]

「仮説を立てる」の本当の意味

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などの大ヒットを生み出したのち、大手出版社を辞め、作家エージェントを起業した編集者・佐渡島庸平氏。彼が大切にしているのは「仮説を立てる」ということだ。

 仮説を立てる――。ビジネスにおいては基本ともいえるが、佐渡島氏は「仮説・検証がきちんとできている人はあまりいない」と語る。彼のいう「仮説を立てる」とはいったいどういうことなのだろうか?

 本連載では早くも3刷と好評を博している佐渡島庸平氏初の著書『ぼくらの仮説が世界をつくる』のエッセンスを紹介していく。

「仮説を立てる」の本当の意味

「何かを成し遂げるためには、仮説・検証が重要だ」とよく言われます。しかし、日常的にそれを実行するクセが付いている人は、どれほどいるでしょうか。

 出版の現場で、仮説・検証が実行されているところを、あまり見たことがありません。

 作品が思うように売れなくても「作家も編集者も営業もがんばったのに、残念だったね。さあ、次の作品でがんばろう」という場合がほとんどです。ヒット作は、いつも「予想外」なものばかり……。

 ヒット作は狙って作れないのでしょうか?

 ぼくはこの「仮説・検証」という作業をかなり意識してやってきました。それも、数年かかるような大きな範囲のことから、今日から始められるような小さなことまで。思いつくことは、つねに仮説・検証というフレームワークの中で思考してきました。

 そのことである程度、「ヒットを生み出す」ことができるようになったのではないかと思っています。

 いつも念頭に置いているのは「仮説を先に立てる」ということです。

 「仮説を先に立てる」だなんて、当たり前のことだと思うでしょう。でも、実際は、そうではないのです。ほとんどの場合、「情報を先に見て」、それから仮説を立ててしまう。ぼくも少し気を抜くと、そのような思考に陥ってしまいます。

なぜ、ぼくらは前例主義に陥ってしまうのか?

 最近、ぼく自身が反省した例を挙げましょう。

 税理士とコルクの決算の打ち合わせをしていたときのことです。

 コルクは3人でスタートし、しばらくは人を増やさないつもりでした。そのほうが、挑戦的に動き回れると思っていたからです。しかし、さまざまな仕事のご提案をいただき、3年が経ったときには、社員10人、外部のスタッフやアルバイトを合わせると30人弱の所帯になっていました。

 決算の数値を見ながら、来期のことを考えます。そうしたら「30人に支払いをするためには、来期も最低でもこれくらいの売上が必要だな」とか「この仕事は継続しないとまずいな」なんて自然に考えてしまっていたのです。

 ハッとしました。「会社というのは、こうやって守りに入って、ダメになって行くんだな」としみじみ思いました。たった3年で「守り」の考えを抱いてしまったわけです。

決算という過去の情報をもとに来期をイメージして仮説を立てても、今期の延長線上にあるアイデアしか思いつきません。コルクは、まだそんな段階ではない。この時代を生き抜く、出版の新しい形を模索するために、いろいろなことに挑戦するフェーズなのに、それができない思考に一瞬、陥ってしまった。ベンチャーなのに「前例主義」的になってしまったわけです。

 前例主義というのは、「情報→仮説」という順番で物事を考えることで起きます。ほとんどの人は、真面目に案件に取り組むがあまり、情報を集めてから仮説を立てようとするのですが、そこに大きな罠が潜んでいるのです。

 特に業界が縮小しているときは、リスクを減らすため慎重になります。過去の情報を集めてきては「仮説・検証」を繰り返します。しかし、そのようによかれと思ってとった行為が、前例主義的になり、身動きがとれなくなって、自らの首をさらに絞めることになるのです。

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佐渡島庸平 [株式会社コルク代表取締役]

1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、モーニング編集部で井上雄彦「バガボンド」、安野モヨコ「さくらん」のサブ担当を務める。03年に立ち上げた三田紀房「ドラゴン桜」は600万部のセールスを記録。小山宙哉『宇宙兄弟』も累計1600万部超のメガヒットに育て上げ、TVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎「モダンタイムス」、平野啓一郎「空白を満たしなさい」など小説連載も担当。12年10月、講談社を退社し、作家エージェント会社、コルクを創業。


ぼくらの仮説が世界をつくる

1600万部超 『宇宙兄弟』、600万部超 『ドラゴン桜』を大ヒットに育て上げた編集者であり、作家エージェント会社「コルク」を起業した、 いま注目度ナンバーワンの編集者・経営者が仕事論を初めて語る!

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