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トンデモ人事部が会社を壊す

ベッキー騒動にみる「言い繕い」が組織を壊す

山口 博
【第37回】 2016年1月26日
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多くの職場に蔓延するウソと言い繕い
あなたはベッキーを本当に笑えるか

 ベッキー騒動が収まらない。会見内容の適否、擁護論の根回し、本人の海外滞在まで、まさに一挙手一投足に至り、その是非が取りざたされる事態と化している。私にはこの騒動が収まらない根本の原因は、ひとつの言葉の言い回しにあるように思えてならない。それは、離婚届を“卒論”と表現していることだ。

 この騒動の場合、卒論という表現は、本来であれば公開されるべきでないLINE上のやりとりではある。しかしこれが公開されて、大きな違和感を覚えさせていることに、騒動が収まらない大きな原因があるのではないか。

 たかが言葉の言い回しと思われる方もいるかもしれない。しかし、たったひとつの言葉の使い方が、人間関係を弱体化することもあるのだ。人事の場面でよく使われる“卒業”(転職のための退社)もその一つだ。

転職は“卒業”!?表面を取り繕うだけの美辞麗句を並べて、人間関係を悪化させまいとする組織は多いが、長い目で見れば逆効果である

 転職のために退社する際の挨拶で、「このたび、○○会社を卒業することになりました。○○年間、たいへんお世話になりました」という挨拶をする人がいる。

 読者の方も1度や2度、この挨拶に遭遇したことがあるのではないか。この挨拶に、「みなさまからいただいたご恩は決して忘れません」と続けば、まさに卒業式の卒業生代表挨拶である。

 これが、転勤の挨拶であったり、定年退職であったりするならば、まだわかる。しかし、やむにやまれぬ事情があり、もうこの会社とはやっていけない、他所で生きていきますと一大決心をしたに違いない、転職の場面で使われることに、大きな違和感を覚えずにおれない。

 転職する者が転職を卒業と表現することには、その根本原因にはふれずに、表層的で儀礼的な言葉を取り交わして、事なきを得ようという防衛本能が見え隠れする。そして、表層的な言葉を取り交わすのみであること自体が、「あなたには本音を言う必要はありません」「あなた方を軽んじています」というメッセージを、本人が意図していなくても伝えてしまう。加えて、真実の理由を言わないこと自体が、不誠実であるという印象を伝えてしまう。

 そして、送る側も、「卒業おめでとう」と、もちろんそのような意識が皆無ではなかろうが、本心とはかけ離れたメッセージを送る。騒動を起こさず去っていただきたいと願う「事なかれ主義」が見え隠れする。そして、「こちらも本音を言う必要を感じていません」「こちらこそあなたを軽んじています」というメッセージで応答しているようなものだ。加えて、こちらも真実を言わず、不誠実には不誠実で返す。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

サラリーマンの会社人生のカギを握る人事部。しかし近年、人事部軽視の風潮が広まった結果、トンデモ人事部が続々と誕生している。あっと驚く事例をひもときながら、トンデモ人事部の特徴や、経営陣がすべき対処法などを探っていく。

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