「第4局面」のリスクシナリオ浮上
“世界同時不況”再来への不安
昨年来、筆者の抱く基本シナリオは、2000年代以降の世界経済の長期にわたるバランスシート調整の「第3局面」、新興国問題を抱える局面にあるとの認識であった。2016年を展望し、先進国は緩やかな改善を見込むが、新興国は下振れリスクを内包する局面にあるとした。
バランスシート調整の3局面は、図表1にまとめてきた。第1局面として2000年代以降、先進国の民間セクターの過度な信用拡張の反動が、2007年のサブプライム危機、2008年リーマンショックにつながった。第2局面は、第1局面の危機に対処した財政拡大により、2009年以降、先進国で債務問題が生じた。
第3局面は、先進国のバランスシート調整が第2局面の先進国自らの対応では収まらず、新興国の信用拡張によって対処されてきたことによる。新興国が新たなバランスシート調整を迎える局面に入ったとの認識だ。第3局面では「端境期」とし、牽引役の交代シナリオ、新興国の減速と先進国の回復シナリオとしてきた。
しかし、今年新たなリスクシナリオ、「第4局面」が浮上した。新興国が深刻なバランスシート調整にあるなか、先進国もバランスシート調整が長引き、世界連鎖不況に陥ることだ。唯一の牽引役である米国が利上げで失速し、世界に牽引役が不在となる「世界水没(金利マイナス)」の不安、極端には世界同時不況再来である。年初来の世界的株安はそうした悲観シナリオへの不安による面が大きい。
◆図表1:世界のバランスシート調整局面の概念図
筆者は今から4年前、2012年に、『20XX年世界大恐慌の足音』 と題する本を著したことがある。これは、先の段階論で言えば、「第1局面」を前提とし、日米欧のバランスシート調整が同時に生じた環境下、世界経済戦争が生じている「新重商主義」の局面にあるとの問題提起であった。その認識は今日も変わらない。