国内の大半にブロードバンドインフラが整い、各種IT機器の価格も下落してきた今日。小売、流通業界においても、システムの進歩には目覚ましいものがある。たとえば、4月から都内のドラッグストア(DgS)では電子マネーによる個人認証とPOSデータによる購買履歴、さらにデジタルサイネージ(*)を連動させた最先端の実験が展開されている。また、iPhoneなどのスマートフォンに搭載されるAR(拡張現実)機能を活用し、モニター越しに店舗や商品を映し出すことでクーポン情報が表示される実験、さらには高速データ通信を駆使し、ジェネリック医薬品の店頭在庫を店舗間相互に融通するシステム、全国規模に広がる従業員の情報共有を社内SNS(ソーシャルネットワーキング)で実現しようとする試みなど、各方面でさまざまなシステムが導入され始めている。

 DgSを取りまく一般的なITシステムには、どのようなものがあるだろうか。売上・仕入れ・在庫管理、POSシステムをはじめ、労務管理、社内イントラ、ポイント制度、モバイルを含むwebサイト、E-コマース。さらに調剤併設店なら、レセコンや服薬指導、医療用医薬品の在庫管理なども含まれる。いずれにしても、非常に幅広いシステムが必要とされている。薬剤師教育を、社内ネットで行っている企業も少なくないだろう。

 中小の薬局、DgS企業にとって、こうした多岐にわたるシステムを構築することは大きな「バクチ」だ。大手ならば、じっくりと腰を据えて、自社の目的に到達できるシステムを一から構築することも可能だろう。しかし、中小の経営規模ではそうはいかない。「もし大手チェーンのシステムを、そのまま流用することができれば……」と考える企業も、もしかしたらあるかもしれない。

 調剤薬局チェーン大手の日本調剤では、そうした中小の調剤薬局企業に向け、自社で開発した調剤薬局内システム提供を行っている。「弊社システムの強みは、弊社店舗とほとんど同じシステムを使うことができる点。とくにジェネリック品のデータベースは、弊社の薬局と同じ即時的なアップデートで情報を提供できます」と、同社システム部の河野文隆部長は話す。さらには薬剤師教育システムにおいても日本調剤は、社内向け教育システムを外部に開放した「JPLearning」を昨年4月から提供している。「費用的には利益が出る額ではないが、薬剤師全体のレベルアップにつなげてもらいたい」(同社、インテリジェンス部・大貫薫人氏)。

 ポイントカードやモバイルクーポンの例を見るまでもなく、消費者の「IT慣れ」は加速度を増している。また、ネットワークを介して扱えるデータ量は増加の一途でもある。小売業にとって、いまや新時代ITシステムは避けて通ることのできない道だ。いかに効率良くシステムを導入していくべきか。今後も業界を取り巻く情報には、注意を払っていきたい。

*デジタルサイネージ……モニターなどに通信機能を用いて、リアルタイム性を実現した、電子看板


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