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ニッポン 食の遺餐探訪

一流シェフが絶賛する日本産のイタリア野菜

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第39回】 2016年2月3日
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鮮やかな色のイタリア野菜・トレヴィーゾ。こうした食材が日本のイタリア料理の質を驚くほど高めている

 グローバル化が文化を単一にしてしまうのではなく、むしろ多様化を推し進めるという考察が興味深かった『創造的破壊――グローバル文化経済学とコンテンツ産業』などの著作で知られるタイラー・コーエンの新刊『エコノミストの昼ごはん』を読んだ。これは日常の食事をどのように選ぶべきかをテーマにしたコラム集である。

 本のなかで彼は東京については「最も魅力的な場所」と書いている。中産階級の多い国なので評判と異なり、食事のコストも低く、また東京のレストランはほとんどハズレがないのだという。これは東京だけではなく日本の都市すべてについて言えるだろう。

 面白いのは著者が「奇妙に思われるかもしれないが、東京で豪勢な食事をするつもりなら、日本料理は避けたほうがいいと思う。おすすめはフランス料理、イタリア料理、中国料理だ」と述べているくだりである。

 日本を訪れる外国人の多くは日本のイタリア料理とフランス料理の質に驚く。日本には世界でも指折りのフランス料理、イタリア料理店があり、本国と比べてもまったく遜色のないクオリティの料理を出している。

 一昔前まではそうではなかった。六本木にある老舗イタリア料理店では今でも、青しそを使ったスパゲッティを提供している。日本でバジルが手に入らなかったからだ。年配の料理人から、オリーブ油は食料品店ではなく薬局で買うものだったし、入手できても高価だったのでサラダ油で割っていた、という話を聞いたことがある。

 しかし、今では様々な種類のオリーブオイルをはじめ、本国でも知る人の少なかったバルサミコ酢などが、スーパーの棚にまで並ぶようになった。「本場はどうなっているか」を合言葉に日本人が料理を探求していった結果だ。今ではイタリア野菜まで国内で栽培されるようになった。

イタリア料理店が一軒もない町が
「イタリア野菜」で町おこし

 山形県河北町。県の中央に位置し、特産品は紅花とスリッパ、名物はB級グルメ『冷たい肉そば』という、およそイタリア料理とは縁のなさそうな町だ。その証拠に町にはイタリア料理店が一軒もない。

 しかし、そんな町が今、イタリア野菜でにわかに活気づいている。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

「ニッポン 食の遺餐探訪」

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