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日本に巣食う「学歴病」の正体

「学歴コンプレックス」をバネにして
人は本当に成功できるのか?

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第5回】 2016年2月9日
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学歴コンプレックスをバネにしてのし上がった、人材派遣会社社長の栄光と挫折から教訓を学ぼう

 今回は、人材派遣会社の創業経営者だった男性の姿を通じて、学歴コンプレックスについて考えてみたい。この男性を仮にA氏とする。A氏は現在、会社の経営を離れている。「最終学歴・高卒」というコンプレックスをバネにして、一時期成功を収めた。

 A氏は高学歴で語学のできる20代女性を次々と雇い、派遣社員として派遣先のテレビ局に送り込んだ。なぜ高学歴の多くの女性たちは、知名度が低いこの派遣会社にエントリーをし、働き続けたのか。そこに着眼すると、女性たちの「劣等感」と、この経営者の「学歴コンプレックス」が重なっている状況が見えてくる。ここに、「学歴病」が浸透する温床があるように思える。

高学歴で語学堪能の20代女性を操る
学歴コンプレックスの高卒社長

 昨秋、ネット上である男性を見つけた。十数年ぶりだった。しばらくの間、その画面に見入った。この男性・A氏は年齢が60代前半。2010年前後に会社を倒産させた。直後から、社員や取引先の間で「行方不明」と噂されていた。会社の末期には、社員に給料すらきちんと支払わなかったという。

 彼が二十数年間社長をしていたのは、都内・赤坂にある人材派遣会社。1980年代後半に創業した。筆者がA氏を取材したのは、1995年の冬。当時、「ニューメディアの旗手」というテーマで、10人前後の経営者を取材したうちの1人だった。取材は赤坂のマンションで行なわれた。学歴にコンプレックスがあるらしいことを漂わせる物言いだった。

 「うちの社員には、語学ができる女性が多い。難関大学の外国語学部や文学部を卒業した、20代の女性たちだ。TOEICでは大半が850点以上。東京外語、上智大、慶應、ICU、青山学院、立教、聖心女子、明治学院、独協などのOGだ……」

 当時40代前半。身長は180センチ近くあり、筋骨型。離婚したばかりだったが、表情は溌剌としていた。その後、数年に一度のペースで5回ほど取材した。2006年が最後の取材だった。2007年、数人の社員から「業績難のため資金繰りが苦しくなっている」と聞いた。

 彼は福岡の出身。高校を卒業後、「こんなところで終わりたくない」と単身上京。「最終学歴が高校卒であることに劣等感を感じていた」と話していた。賃金は高いが仕事が厳しいことで知られる、大手運送会社のドライバーとしてお金を稼ぐ。世の中を見返してやりたい――。そんな思いだったという。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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