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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

20代高学歴女性を飼い殺す大企業のホンネ(上)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第7回】 2015年3月17日
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 今回と次回は、数年前、大規模なリストラを行った中堅広告代理店(正社員数600人)の元事業部長(46歳・男性)へのロングインタビューを取り上げたい。記事では、この男性をA氏と記述した。

取材は、新宿駅付近で行われた

 A氏は、前職でリストラが行われたとき、創業経営者である社長から命じられ、自らが責任者を務める部署に在籍していた正社員130人のうち、70~80人から退職届を取った。23歳~28歳の社員たちをターゲットにしたものだった。これ以降、A氏は会社の上層部に不信感を強く抱き、依願退職した(この間の事情は、筆者の記事『未来ある20代社員80人が涙した壮絶リストラの内幕 元事業部長が懺悔する「追い出す側」の奔放な論理』参照)。

 それから1年半後、新天地(広告代理店、正社員数500人)で働くこの男性にあらためて取材をした。特に前職で健康的にがんばる20代の女性社員に焦点を合わせた聞き取りを試みた。そこには、多くの日本企業が抱え込む「闇」が見える。


Facebookで「今日のランチはこれ!」
過酷なリストラを経た職場の一見平穏な日常

筆者 Aさんのフェイスブック(以降、FB)を拝見すると、前職(数年前、リストラで辞めた会社)の社員たち数十人と「友達」になり、今もつながりがありますね。私が注目をしたのは、20代の女性たち15人ほどです。

 たとえば、「赤ちゃんができました!」とか、「今日のランチはこれ!」と盛んに書いています。FBとはあのようなものなのかもしれませんが、あの人たちに仕事の悩みなどはないのでしょうか。天下泰平というか、恐ろしいくらいに平和に見えます。この会社はつい数年前、大規模なリストラをして、20代の社員を大量にリストラしたわけでしょう?「明日は我が身」とは、思わないのでしょうか。

A氏 たぶん、そのようには感じないのだと思う。リストラは、2009~2012年のこと。それ以降も、散発的にしているみたいだけど…。当時、辞めさせられた20代は、今はその多くが30代。しかも、あの会社にはもういない。ここに、すでに「世代間のギャップ」がある。リストラは自分がそのターゲットにならない限り、深刻に受け止めないものですよ。そして、あの会社の上層部は「翻訳」をするのが、上手い。

筆者 翻訳?

A氏 事実を都合のいいように歪曲するのです。たとえば、社長や側近の役員が、管理職会議や全社員参加の集会などで繰り返し言うわけですよ。「数年前の事業再編で、当社は息を吹き返した」「自らの意思で辞めた社員は、それぞれの新天地で活躍している」といった具合に。社長などは、「辞めた社員はうちで働き、スキルやノウハウを磨くことができたことを感謝している」と堂々と言っています。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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