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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

国内経済の鈍化がいよいよ市場に意識される

森田京平・バークレイズ証券 チーフエコノミスト

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]
【第199回】 2016年2月10日
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マイナス金利の導入を決めた日銀
預金保険料さえ賄えない国債投資

マイナス金利導入直後から一転、足元では円高と株価下落が進んでいる

 1月29日、日銀は大方の予想を裏切る形でマイナス金利の導入をアナウンスした。直後は株高、円安、金利低下という流れが市場に生まれるかに見えた。しかし、本稿執筆時点でも続いている動きは金利低下のみであり、株価は一転して下げ足を速め、円も増価している。

 2011年ごろまで、10年国債利回りは新規の長期貸出約定平均金利と近い水準で推移していた(図表1)。これによって、銀行にとって貸出と国債投資が選択対象となりえた。

 ところが、足下では10年国債利回りは貸出金利(銀行の資産利回り)ではなく、普通預金金利(銀行の負債利回り)に並ぶ水準まで下がった。しかも2月9日には、同利回りはついに史上初のマイナスを記録した。

◆図表1:普通預金金利に並ぶ10年国債利回り

出所:日本銀行、東京証券取引所などの資料よりバークレイズ・リサーチ作成

 MMFなどとは異なり、銀行は預金に対して保険料を払っている。その保険料率は、「無利息」「要求払い」「決済機能の提供」という3条件を満たす決済性預金については0.054%、その他の預金については0.041%となっている。つまり10年国債で運用しても預金保険料さえ賄えない。預金を集めて国債で運用するいわゆる預証業務の在り方が根本的に問われている。

 このような市場環境では、結局、今後も銀行は消去法的に日銀当座預金を積み上げることになろう。すでに国内銀行の資産構成において、現金・預け金が国債残高を逆転しているが、今回のマイナス金利がこうした状況を大きく変えるとは想像しがたい(図表2)。

◆図表2:国債から現金・預け金に移る国内銀行の資産

 注:ここでの「その他有価証券」には外国証券、株式、地方債が含まれる。
出所:日本銀行『国内銀行の資産・負債等(銀行勘定)』よりバークレイズ・リサーチ作成
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森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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