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三谷流構造的やわらか発想法

映画「オデッセイ」で火星にひとり残された主人公がハカったもの

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第132講】 2016年2月18日
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『火星の人』は近未来の超リアル・サバイバルSF

 2014年のSF各賞を総なめにした火星サバイバル小説、『火星の人(The Martian)』が映画化され、『オデッセイ(*1)』として日本でも2月5日に公開されました。

 7日(日曜日)までの3日間で42万人を動員し、6億円以上を売り上げました。これで、全世界興行収入は6億ドルを突破。リドリー・スコット監督(*2)作品最高の成績を更新中です。

 『火星の人』は、いまから20年後の火星探索ミッションを舞台にしたサバイバルSFですが、その執筆・発刊スタイルもまた、近未来的なものでした。

 作者アンディ・ウィアーは15歳で国立研究所に雇われるほどのプログラマーでした。物理学者を父に持つウィアーはSF好きで、プログラマーとして働きながらも趣味でSF作品を書き続け、彼個人のサイトで公開していました。そして2011年、39歳のとき『The Martian』がアップされました。

 そのあまりの人気にKindle版が発売(*3)され、2014年2月、最終的に紙版が発売された(*4)のです。Kindle版は発売3ヵ月で3万5000ダウンロードに達したとか。

人類最初の「火星で死亡」を逃れるために、
主人公ワトニーがハカったもの

 物語で素晴らしいのはその圧倒的なリアリティですが、もっとも心を打つのは火星探査ミッション中の事故で、ひとり火星に取り残されてしまった主人公ワトニーの、ユーモアと楽天性です。それこそが、彼のめげない精神と抜群の行動を支えているのです。

 あるヒトは映画『オデッセイ』を「観るエナジードリンク」と評しました。そう、この本『火星の人』は、「読むエナジードリンク」と言えるでしょう。読むと動悸が高まり、テンションが上がり、もの凄く前向きになれます。

 気圧が地球の135分の1(つまりほとんど真空状態)、気温がマイナス50℃(冬のエベレスト山頂より寒い)の火星で、ワトニーは精神の安定を保ちつつ、生き延びる術を見つけ、創り出し続けました。

*1 海外での映画題名は本と同じく『The Martian』。日本でも『火星の人』でよかったのに……。
*2 『エイリアン』(1979)、『ブレードランナー』(1982)、『ブラック・レイン』(1989)、『グラディエーター』(2000)、『ロビン・フッド』(2010)、『プロメテウス』(2012)など。
*3 最初は価格が99セントだった。システム上可能な、最低の価格を付けたため。
*4 日本でも即座に翻訳され、2014年8月ハヤカワ文庫SF『火星の人』として出版された。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

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