国民年金保険料の納付率は、信じられないようなレベルまで低下している。2010年3月末での納付率は、59.4%だった。これは、1年前の納付率61.5%より低い。いまや、約4割の人が保険料を払っていないのだ。国民年金の保険料納付率は、まさにとどまるところを知らぬ勢いで低下を続けている。
平均値が低いことももちろん大問題だが、さらに深刻なのは、若い世代ほど納付率が低くなっていることである。2008年度における全体の納付率は62.1%だったが、25~29歳の納付率は49.4%であり、納付者が半分にも達しない状況となっているのだ。こうした状態が続けば、納付率は将来さらに低下してゆくことになるだろう(「平成20年度の国民年金の加入・納付状況」の図4を参照)
常識的に考えれば、こうした事態に立ちいたったら、給付水準を半分程度に切り下げないかぎり、制度は運営できないはずである。少なくとも、民間が運営する制度であれば(年金以外のいかなる事業であっても)、そうなるはずだ。
ところが、国民年金の給付は切り下げられてはいない。
半分近くの人が保険料を支払わない状態で、国民年金制度が維持できるのは、いったいなぜなのだろうか?
サラリーマンが基礎年金制度を通じて
国民年金を支えている
上で述べた問いに対する答えを最初に言えば、「厚生年金や共済年金に加入するサラリーマンが、基礎年金制度を通じて国民年金を支えているから」である(実際の仕組みは、後に詳述するように、かなり複雑である)。
1985年に導入された基礎年金制度は、実は国民年金に対するこうした財政補助を行なうためのものだったのだ。
民主党は、今年7月の参議院選挙のための選挙公約において、「年金制度一元化」を掲げている。そうしたことを言っているのは、現状では、国民年金、厚生年金、共済年金などが独立に運営されているという認識があるからなのだろう。
しかし、実際には、すでに25年も前に、実質的な制度一元化は行なわれているのである。それがなければ、国民年金はとっくの昔に消滅していたことだろう。