ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

未納率なんと40%!
その国民年金が破綻しない不公平な理由

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第77回】 2010年7月3日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 国民年金保険料の納付率は、信じられないようなレベルまで低下している。2010年3月末での納付率は、59.4%だった。これは、1年前の納付率61.5%より低い。いまや、約4割の人が保険料を払っていないのだ。国民年金の保険料納付率は、まさにとどまるところを知らぬ勢いで低下を続けている。

 平均値が低いことももちろん大問題だが、さらに深刻なのは、若い世代ほど納付率が低くなっていることである。2008年度における全体の納付率は62.1%だったが、25~29歳の納付率は49.4%であり、納付者が半分にも達しない状況となっているのだ。こうした状態が続けば、納付率は将来さらに低下してゆくことになるだろう(「平成20年度の国民年金の加入・納付状況」の図4を参照)

 常識的に考えれば、こうした事態に立ちいたったら、給付水準を半分程度に切り下げないかぎり、制度は運営できないはずである。少なくとも、民間が運営する制度であれば(年金以外のいかなる事業であっても)、そうなるはずだ。

 ところが、国民年金の給付は切り下げられてはいない。

 半分近くの人が保険料を支払わない状態で、国民年金制度が維持できるのは、いったいなぜなのだろうか?

サラリーマンが基礎年金制度を通じて
国民年金を支えている

 上で述べた問いに対する答えを最初に言えば、「厚生年金や共済年金に加入するサラリーマンが、基礎年金制度を通じて国民年金を支えているから」である(実際の仕組みは、後に詳述するように、かなり複雑である)。

 1985年に導入された基礎年金制度は、実は国民年金に対するこうした財政補助を行なうためのものだったのだ。

 民主党は、今年7月の参議院選挙のための選挙公約において、「年金制度一元化」を掲げている。そうしたことを言っているのは、現状では、国民年金、厚生年金、共済年金などが独立に運営されているという認識があるからなのだろう。

 しかし、実際には、すでに25年も前に、実質的な制度一元化は行なわれているのである。それがなければ、国民年金はとっくの昔に消滅していたことだろう。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
消費税だけでは財政再建できない!「日本を破滅から救うための経済学」

経済論争の最大のトピック=デフレ問題から、赤字国債発行の問題点、年金の破綻、消費税増税、円安誘導の為替政策まで、主要論点を網羅。いずれのテーマでも、通説と一線を画す内容に驚愕すること必至。綿密なデータの読み込みに裏付けられた、野口教授のマクロ経済政策論!1680円(税込)

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

突如として世界中を襲った経済危機。激流に翻弄される日本経済はどうなってしまうのか? なすべき対策はあるのか? 100年に1度の未曾有の事態を冷静に分析し、処方箋を提示する野口悠紀雄の緊急連載!

「野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む」

⇒バックナンバー一覧