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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

大河ドラマ『真田丸』で学ぶ戦国武将の意思決定スキル

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第43回】 2016年2月17日
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大好評の『真田丸』に見る
戦国武将たちの意思決定能力

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

個性も能力もさまざまな戦国武将たちが、自らの特性にあった意思決定能力を磨いていたことが、ドラマから学べる

 大河ドラマ『真田丸』が好評だという。筆者もマレーシア在住ながら、ケーブルテレビで毎週観ている。毎週観たいと楽しみに感じる大河ドラマも久しぶりだ。

 そして、その内容は心理学者として、またビジネス研究に関わるものとして、大変に興味深くもある。それは当時、目まぐるしく状況が変わり先が読めないという高い「不確実性」の中、戦国武将たちがいかに意思決定を行ったかを丹念に(もちろんドラマティックに)描いているからだ。

 さらに、ビジネスの観点から見ると、戦国武将という「上司」が、いかに部下である家臣たちと関わりつつ意思決定をするかという点が面白い。

 歴史の経緯を知っている私たちは、彼らの意思決定の結果を知っている。過去の歴史ドラマには、卓越した能力を持った有名武将が、その能力をもって個人的に素晴らしい決定をする、といったような描写が少なくなかった。だが、実際には当時の彼らは、そんなに迷いなくカッコよく決断することなどできなかっただろう。

 むしろ五里霧中の中で物事を決めざるを得ず、自分の決定に大いに迷ってもいただろう。現在のようにマスメディアもインターネットもソーシャルメディアもない時代だ。何が本当に起こっているかを知ることだけでも至難の業だったはずだ。脚本家の三谷幸喜氏は、その「意思決定の苦しみ」の部分を実に面白く描いている。

 その中でも、第5回放送で本能寺の変の後、内野聖陽扮する徳川家康と、草刈正雄の演じる真田昌幸の意思決定の「仕方」の対比が、心理学・ビジネスの側面から見ると、非常に興味深かった。

 本能寺の変が起こったのち、多くの武将は「何か大変なことが京の都で起こったらしい」という程度の情報しか持ち合わせていていなかった。当時、堺にいた徳川家康でさえ、織田信長が討たれたかどうかも確信が持てなかった。織田家臣の滝川一益に至っては京の変事すら知らなかった。

 これらはドラマの中での話なので、史実がどうであったかは定かではない。だが、一種の思考実験としても、この不確実状況で、各戦国大名がいかなる意思決定方法をとったかを比較してみるのは興味深い。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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