なぜ「書き写す」だけで「読書スピードが上がる」のか?

「ライフハッカー[日本版]」「NewsWeek日本版」などのニュースサイトに、月60本近くのブックレビュー記事を寄稿し、年間700冊以上の読書量を誇る人気書評家の印南敦史氏。そんな多読生活を送る彼も、数年前までは「1ページ5分」かかるほどの超・遅読家だったという。

遅読にもかかわらず、毎日1本の書評を書くことになった彼がつかんだ、新時代の読書術「フロー・リーディング」とは? 最新刊『遅読家のための読書術』の内容をベースに、「読書スピードの遅さ」や「読書量の減少」に悩む人たちにお届けする。

本を「流し読み」しようとしても、なかなか思い切りがつかない、という人も多いのではないだろうか? そういう人は「本の中身を覚えよう」というスタンスを捨て去る必要がある。そのために有効な方法が「引用」である。一見すると非効率なこのメソッドを印南氏が勧める理由とは?

書評欄を担当してから、
本が読めるようになった

生活に役立つ情報を扱うウェブサイト「ライフハッカー[日本版]」の当時の編集長から、「書評を書いてみませんか?」と声をかけられたのは、2012年の夏ごろのことでした。

「超」のつく遅読家だった僕は、内心冷や汗をかきながらこのオファーを受けたわけですが、実はドキドキしていたのは「遅読」だけが理由ではありません。

というのは、自分で書評を書くという発想自体がなかったから。もともと本を読むことは好きだったけれど、その体験をベースに文章を書くという作業がどういうものなのか、あまりピンとこなかったのです。

本について書くといえば、夏休みの宿題である「読書感想文」ぐらいで、あまりいいイメージもありませんでした。