米国における自動車品質調査の代名詞的存在である「イニシャル・クオリティ・スタディ」(JDパワー&アソシエイツが毎年発行)。その評価結果は、中国に抜かれたとはいえ、いまだ巨大な米国自動車市場で事業を展開する自動車メーカーにとっては、販売を後押しするグッドニュースにも、ブランドに痛打を与えるバッドニュースにもなる。では、品質問題に揺れるトヨタの評価はどうだったのか。また、新たに浮上したメーカーはどこか。調査の中身をよく見ると、意外な構図も浮き彫りになる。(ジャーナリスト、ポール・アイゼンスタイン)

 JDパワー&アソシエイツが毎年発行している品質リポートは、「トヨタ」という名前を米国の消費者に馴染み深いものにすることに貢献した。だが6月に発表されたその最新号を読めば、ますます懐疑的になりつつある米国の自動車ユーザーは、トラブルに悩むトヨタのライバルのもとへと急ぎはしないだろうか。

 カリフォルニアに本社を置く市場調査会社JDパワーが最初の「イニシャル・クオリティ・スタディ」(IQS)を発表してから24年が経過した。その大半の期間を通じて、トヨタはランキング上位に留まり続けた。製品サイクルの谷間の年でもトヨタはかなり高い評価を得ており、高品質ブランドとしてのイメージを強化していた。

 だが最新のIQSは、すでに深刻なトラブルに直面している自動車メーカーにとっては、厳しい一撃を与えるものとなっている。高級車ブランドの「レクサス」は再び上位に返り咲いたが、「トヨタ」ブランドは、2009年の第6位から今年は21位と、IQSが調査対象としている33ブランドのなかでも最も大きく順位を下げた。「トヨタ」車のオーナーは100台当たり平均117件の問題を報告している(JDパワーの表現では「117PP100」)。これに対し、業界の平均は109件である。

 「明らかに、トヨタは厳しい1年に耐えてきた」と評するのは、JDパワーでグローバル自動車リサーチ部門を率いるデヴィッド・サージェントだ。

 米国トヨタの幹部も、筆者の取材に対して、「(この調査結果は)まったく予想外というわけでもない」と話す。「調査は、弊社のリコール件数が最高潮の時期に行われた」と同幹部は言う。昨年10月、数百万台のトヨタ車に、フロアマットがズレてアクセルペダルに引っかかる不具合があるという報道が発端となった、多数の安全性関連のリコールの話である。