「今回の件は誰も悪くありませんし、誰にも責任はありません」
ゆうパック再スタート初日の7月1日から大遅配騒ぎを起こした日本郵便。4日の謝罪会見明けの5日、郵便局(支店)の朝礼で読み上げられたのは、鍋倉真一社長が全国の支店長にあてたメールだ。
この時点で26万個ものゆうパックが遅配していたが、鍋倉社長に反省すべき点はないようだ。
「悪いのも、責任があるのもすべてお前たち経営陣だ」。朝礼後、そう現場職員が毒づくのも当然だ。
1日配達指定のゆうパックを配り切れずに翌2日に配っており、ターミナル局と呼ばれる、物流拠点が機能マヒを起こし、支店にゆうパックが届かない大混乱が起きていると本誌がネット配信したのは2日夜のことだ。
3日以降、テレビや新聞が騒ぎ、隠し切れなくなると、鍋倉社長は会見で「いろんな研修や予行演習は行ったが、やや不慣れな人間が多かった」「遅配は一過性のもので、7日には正常化できる」と釈明した。準備は十分だったが、突発的事故が起きたかのような説明だ。
だが、遅配は日本郵便の準備不足が原因で起きたもので、一過性で終わるものではない。
上写真は事業統合に向けた職員研修用資料だ。A4判で右から、139ページの資料集、8ページの注意事項、69ページのマニュアル。この3点セットを幹部が職員の前で約40分棒読みする勉強会が唯一行われた研修だ。しかも、実施は統合寸前の6月中旬以降だ。これはまだマシなほうで、「読んでおけ」と資料を渡されただけの職員も少なくない。集配用新端末も人数分揃わないありさま。まさにぶっつけ本番で事業統合したのだ。
日本郵便は6日にターミナル局のマヒ、7日には遅配自体が解消したと正常化宣言し、一過性の事故のごとくアピールしている。
だが実態は違う。マヒしたターミナル局、たとえば埼玉県の新都心、春日部への郵便物は新越谷支店へ、同じく千葉県の塩浜は浦安へと違う局に郵便物を隔離し、大量の管理職を投入して処理する人海戦術でマヒを分散させているだけだ。新東京支店には、東京支社所管の都内全支店(旧普通局)の支店長と労務担当課長が動員されている。7日朝には「配達指定期日を過ぎた生もの(冷蔵輸送ではない果実や野菜)はもう配達するなと命令された。遅配解消など大本営発表にすぎない」(首都圏の職員)といい、7日夜時点でも遅配ゆうパックが溢れる支店は多数存在する。
今回の遅配はあくまで、民営化前のスリム化による人員不足のまま、ろくな準備もしないで事業統合したために起きた構造的問題であり、現在のような人海戦術での対応はいずれ限界を迎える。はたして、鍋倉社長は総務省にどんな経過報告を出すのか。まさに見ものである。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)