民主党政権の誕生で本体工事がストップしている群馬県長野原町の八ツ場(やんば)ダムで、“政”と“業”の癒着ぶりが再び浮き彫りになっている。

 国土交通省と群馬県土木整備部の資料に加え、群馬県選挙管理委員会に届け出た政治資金収支報告書によると、2006~08年の3年間で、八ツ場ダムにかかわる100万円以上の工事を受注した業者から、群馬県選出の国会議員や県議会議員、そして群馬県内の市長に対して献金された政治資金は4925万円に上っている。

 こうした献金を受けていたのは22の政党支部。そのうち19支部が、小渕優子衆議院議員や中曽根弘文参議院議員といった地元選出の自民党議員が支部長を務める自民党の支部だ。

 このうち最も多かったのが、04年の参院選で落選し、復活を目指している上野公成氏で、27社から総額1370万円の献金を受けていた。次いで小渕氏が、関係が深い支部を含めて24社から873万円、中曽根氏が11社から604万円、そして山本一太参議院議員が18社から500万円と続いている。

 もちろん、受注業者から献金を受けていた事実だけをとらえて、目くじらを立てるつもりはない。だが、こうした献金している業者が、高落札率の工事を受注しているとなれば話はまったく変わってくる。

 264件中180件──。献金業者が受注したもののうち、落札率が95%を超えている工事の件数だ。「落札率が九十数パーセント以上であれば談合が疑われる」というのが業界の常識。献金企業が受注した工事のじつに7割近くがその水準を超え、落札率が99%を超えているものもザラなのだ。

 なかでも、58件もの工事を受注、その48件が95%以上の高落札率工事だった池原工業は小渕氏と関係が深い支部に、また20件中19件がそうだった南波建設も同じ支部に加え、元社長で自民党群馬県支部連合会幹事長の南波和憲県議会議員が支部長を務める支部に献金している。

 そのほか、受注している工事すべてが95%以上の落札率で、自民党の支部に献金している企業が7社もあるなど、まるで「ダムマネーが自民党に還流している」(関係者)システムが出来上がっているかのようだ。

 この問題を調査している民主党の中島正純衆議院議員は、「献金を受けていれば建設中止とは言えないだろう。自民党が八ツ場ダム建設を推進するのは、こうした利権のためと疑わざるをえない」と指摘する。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久)

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