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ビッグバン・イノベーション
【第1回】 2016年3月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
ラリー・ダウンズ,ポール・F・ヌーネス,江口泰子

「次のシャープ」にならないために
知っておくべき残酷な「ルール」

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いよいよ決着の時を迎え、シャープ再建についての議論が連日メディアを賑わせている。「世界の亀山」と言われた液晶テレビの全盛期には、まさか10年も経たないうちにシャープが台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入るなどということは想像もできなかっただろう。
圧倒的短期間に、絶頂期からどん底にまで落ち込む――そんなシャープを分析し、ある新しい「超・破壊的変化」の犠牲になった、と指摘する人物がいる。『ビッグバン・イノベーション』を発表した、ラリー・ダウンズとポール・F・ヌーネスの2人だ。
果たして、シャープが巻き込まれた「超・破壊的変化」の正体とは何なのか。そして、破滅を避けるためにできることはあるのか。

ほんの数日で競争優位が消し飛ぶ世界で

 アドレス帳、ビデオカメラ、ポケベル、腕時計、地図、書籍、トラベルゲーム、懐中電灯、固定電話、口述用テープレコーダー、キャッシュレジスター、ウォークマン、スケジュール帳、目覚まし時計、留守電、イエローページ、財布、鍵、旅行者用の外国語フレーズ集、トランジスタラジオ、携帯情報端末(PDA)、インダッシュ型カーナビ、リモコン、空港のチケットカウンター、新聞、雑誌、電話番号案内、旅行代理店に保険代理店、レストランガイドに電卓。

 さて、これらの共通点は何だろうか。

 それは、どれもビッグバン・イノベーションの犠牲となって姿を消したか、今まさに犠牲となりつつある製品やサービスであることだ。

 ビッグバン・イノベーションとは「安定した事業を、ほんの数ヵ月か、時にはほんの数日で破壊する新たなタイプのイノベーション」である。

 その速度とすさまじい破壊力を生み出すのは、次々に市場に投入される、よりよく、より安い破壊的な技術だ。この“すばらしい新世界”では、新製品や新サービスは市場に登場した時点で、価格、性能、カスタマイゼーションのすべてにおいて高い競争力を備えている。

従来の定説を覆す「ビッグバン・イノベーション」(「ビッグバン・イノベーション』28ページより)
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 爆発的な破壊力を持つ製品やサービスが登場する──ビッグバン・イノベーションが起きる──と、たちまち世界中の消費者の知るところとなる。ユビキタスで高速な(あるいは“ブロードバンド”の)コンピューティングネットワークや標準、全世界で展開する膨大な数のモバイル機器の為せる業だ。マーケティングを牽引するのは、もはや企業ではない。ユーザー自身だ。ソーシャルネットワークやレビューサイト、ミニブログ、その他の情報共有サイトを通じて、ユーザーは口コミ(とカスタマーサービス)に影響を与える。

 破壊的な新製品やサービスとそのイノベーター企業は、従来の常識とはかけ離れた行動を展開し、熾烈な競争を繰り広げる家電やコンピューティング、通信などの技術集約型産業の競争ルールを書き換えてしまった。だが、コンピューティング革命が暮らしの隅々にまで浸透するのに伴い、破壊的威力を持つ製品やサービスは、それ以外のあらゆる産業でも登場しはじめた。

 冒頭で挙げた製品やサービスに破滅的な打撃を与えた原因はどれも同じ──そう、「スマートフォン」である。コンピューティングと通信機能を備えたこのハイブリッドな端末には、小さなアプリを無数にインストールできる。アプリが小さくて済むのは、データ処理をクラウドコンピューティングで行うからだ。ハードウエア、ソフトウエア、分散コンピューティングの組み合わせが、古いものから最近開発されたばかりのものまで、またたく間にさまざまな機器や製品やサービスに取って代わった。

 破壊的製品やサービスが登場すると、競合にはもはや打つ手がない。成熟産業のサプライチェーンが供給する製品は突然、陳腐化して輝きを失う。既存企業はたちまち打撃を受け、破綻の危機にさらされる。破壊的な製品やサービスの登場を、顧客よりも早く察知する術を身につけておかなければ、即ゲームオーバーだ。

 既存企業と、彼らが入念に練り上げた戦略プランにとって、ビッグバン・イノベーションはまさに悪夢である。(『ビッグバン・イノベーション』i-iiiページより抜粋)

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ラリー・ダウンズ(Larry Downes)

シリコンバレー在住のコンサルタント。それまでの市場を破壊するような技術が登場した際、それがビジネスや政策にどう影響を与えるのか、過去30年にわたりコンサルティング、講演、執筆している。特にインターネットに関するテクノロジーに強い。 アーサーアンダーセン、マッキンゼーなどのコンサルティング会社を渡り歩き、現在はアクセンチュアのフェロー(ハイパフォーマンス研究所)。突如起こった技術革新により、産業構造がどう変わっていくのか、長期的な観点から研究している。ウォールストリート・ジャーナルやブルームバーグ、フォーブス、エコノミストなど、数多くの雑誌に寄稿しており、そのうちForbes.comでの記事は累計350万PVを誇る人気に。著書に、“The Laws of Disruption”(未邦訳)。

ポール・F・ヌーネス(Paul F. Nunes)

アクセンチュアのハイパフォーマンス研究所で、リサーチ担当グローバル・マネージング・ディレクターを務めている。1986年以来アクセンチュア一筋のマーケティングのプロで、ITの進化をビジネスに活かし、予測に役立てるという目的のもとに、ハイパフォーマンス研究所設立に動き、分析を続けている。その研究成果は数々のメディアでも紹介され、また、賞も受賞している。共著に、“Jumping the S-Curve”(未邦訳)。

江口泰子(えぐち・たいこ)

法政大学法学部卒業。編集事務所、広告企画会社を経て翻訳業に従事。主な訳書に『道端の経営学』(ヴィレッジブックス)、『21世紀の脳科学』『ケネディ暗殺 50年目の真実』『毒になる母』(ともに講談社)、『考えてるつもり』(ダイヤモンド社)、『マイレージ、マイライフ』(小学館)、共訳に『真珠湾からバグダッドへ』(幻冬舎)など。
 


ビッグバン・イノベーション

なぜシャープ、任天堂、ソニーは急激に衰退し、アマゾン、Airbnb、富士フイルムは勝ち残ったのか?

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