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ビッグバン・イノベーション
【第2回】 2016年3月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
ラリー・ダウンズ,ポール・F・ヌーネス,江口泰子

エアビーアンドビー(Airbnb)の運命を
ギリギリで救った「決断」とは?

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エアビーアンドビー(Airbnb)は、その圧倒的成功ゆえに破滅しかけた、といえば驚かれるだろうか。昨今日本でも話題にのぼることの多い同社は、世界中の人と部屋を貸し借りできるサービスを現在190ヵ国以上で展開する、シェアリングエコノミー(共有型経済)を代表する米国発の企業だ。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのエアビーアンドビーに、いったいどんな危機が訪れたのだろうか。
『ビッグバン・イノベーション』を発表したラリー・ダウンズとポール・F・ヌーネスの2人によると、なんとエアビーアンドビーは「自ら生み出したイノベーションに押しつぶされかけていた」というのだ。

ビッグバン・イノベーションの4つのステージ

前回取り上げたシャープの事例では、かつて偉大なイノベーションを成し遂げ、圧倒的な成功をなしとげた企業であっても、不断の革新をおこたれば、その成功こそがアダになる様を見た。それでは、イノベーションを成し遂げた企業も、仕掛けられた企業も同様に大激変の只中に放り込む「ビッグバン・イノベーション」とは、そもそも何なのだろうか。著者2人は、そのプロセスを4つにわけ、次のように説明する。

ビッグバン・イノベーションの4つのステージ(『ビッグバン・イノベーション』96ページ)

ステージ1:特異点
 将来を明確に見通す。別の産業から現れる破壊的変化の予兆を見逃さない。新製品や新サービスを投入するタイミングをピンポイントの精度で見抜く目を持ち、サプライヤーや顧客と協業する新たな方法に取り組む。

ステージ2:ビッグバン
 破壊的製品の爆発的普及とひとり勝ち市場に備える。独自のイノベーションを引っさげて新たな競合が現れたときには、持てる力を最大限に発揮して相手の活動の進行を遅らせ、できるだけ長く戦うか、場合によっては相手を買収してしまう。

ステージ3:ビッグクランチ
 破壊的製品やサービスによって市場が飽和状態になったときに、生産と流通を即座に停止できる態勢を整えておく。急激に価値を失う可能性のある在庫や資産、知的財産を処分する準備を怠らない。破壊的変化を読み取り、市場から撤退するタイミングを見極める術を身につけておくこと。製品やサービスがまだ充分な利益を生み出しているときに、撤退のタイミングを計るのは難しい。

ステージ4:エントロピー
 このステージに入ってもまだ現行製品やサービスを提供している企業は、「規制」と「レガシーコスト(負の遺産)」という、ふたつの足枷にうまく対処しなければならない。その一方で、古くなった技術の新たな活用法を探る。その技術が、別の分野のイノベーター企業にとっては、まだ価値を持つ場合も多いからだ。もっと有望な市場に移行するためのロードマップを作成し、新たな市場を創出するために必要な技術を確認して、次の特異点をつくり出す。(『ビッグバン・イノベーション』130-131ページ)

 重要なのは、この4つのサイクルがひと回りするのにかかる期間が、圧倒的に短くなっていることだ。数ヵ月、場合によっては数日といった具合に(同書には、たった48時間で成功から崩壊までを辿った企業も登場する)。

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植西 聰 著

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<内容紹介>
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ラリー・ダウンズ(Larry Downes)

シリコンバレー在住のコンサルタント。それまでの市場を破壊するような技術が登場した際、それがビジネスや政策にどう影響を与えるのか、過去30年にわたりコンサルティング、講演、執筆している。特にインターネットに関するテクノロジーに強い。 アーサーアンダーセン、マッキンゼーなどのコンサルティング会社を渡り歩き、現在はアクセンチュアのフェロー(ハイパフォーマンス研究所)。突如起こった技術革新により、産業構造がどう変わっていくのか、長期的な観点から研究している。ウォールストリート・ジャーナルやブルームバーグ、フォーブス、エコノミストなど、数多くの雑誌に寄稿しており、そのうちForbes.comでの記事は累計350万PVを誇る人気に。著書に、“The Laws of Disruption”(未邦訳)。

ポール・F・ヌーネス(Paul F. Nunes)

アクセンチュアのハイパフォーマンス研究所で、リサーチ担当グローバル・マネージング・ディレクターを務めている。1986年以来アクセンチュア一筋のマーケティングのプロで、ITの進化をビジネスに活かし、予測に役立てるという目的のもとに、ハイパフォーマンス研究所設立に動き、分析を続けている。その研究成果は数々のメディアでも紹介され、また、賞も受賞している。共著に、“Jumping the S-Curve”(未邦訳)。

江口泰子(えぐち・たいこ)

法政大学法学部卒業。編集事務所、広告企画会社を経て翻訳業に従事。主な訳書に『道端の経営学』(ヴィレッジブックス)、『21世紀の脳科学』『ケネディ暗殺 50年目の真実』『毒になる母』(ともに講談社)、『考えてるつもり』(ダイヤモンド社)、『マイレージ、マイライフ』(小学館)、共訳に『真珠湾からバグダッドへ』(幻冬舎)など。
 


ビッグバン・イノベーション

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「ビッグバン・イノベーション」

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