マイケル・ポーター教授も所属するハーバードビジネススクールの戦略部門で、新進気鋭の経営学者として活躍しているのがアンドレイ・ハジウ准教授だ。

2004年から2005年まで独立行政法人経済産業研究所(RIETI)研究員を務め、任天堂、グリー、森ビル(六本木ヒルズ)等、日本企業についてのケース教材を数多く執筆している。

ハジウ教授はマルチサイドプラットフォーム研究の第一人者として知られている。マルチサイドプラットフォームビジネスとは、複数の利用者が直接取引できる場を提供するビジネスのこと。その形態は技術、製品、サービスなど様々だが、売り手と買い手が自由に売買できる場所とシステムを提供し、利用料や広告料等で儲けるビジネスだ。

マルチサイドプラットフォームがなぜ今注目されているのか。そして、どんな日本の事例をハーバードで教えていて、日本から何を学んでいるのか。ハジウ教授に聞いた。(聞き手/佐藤智恵 インタビューは2015年6月24日)

任天堂Wii、楽天市場、i-modeが成功例
マルチサイドプラットフォームとは何か

アンドレイ・ハジウ Andrei Hagiu
ハーバードビジネススクール准教授。専門は経営戦略。マルチサイドプラットフォーム(多面的プラットフォーム)研究の第一人者。2004年から2005年まで独立行政法人経済産業研究所(RIETI)研究員。ハーバードでは“GREE, Inc."(2012), “Responding to the Wii?” (2009), "Roppongi Hills: City Within a City."(2007) 等、日本企業についてのケーススタディを数多く執筆。2015年には慶應ビジネススクールにて特別講演を行った。主な著書に“Invisible Engines: How Software Platforms Drive Innovation and Transform Industries”(The MIT Press, 2006)、最新の寄稿論文に“Strategies for Multi-Sided Platforms” (Sloan Management Review, 2014), “Do You Really Want to Be an eBay?” (Harvard Business Review, 2013)がある。
(c)Getty Images

佐藤 2004年から2005年まで独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の研究員だったと伺いました。なぜ日本で研究しようと思ったのですか?

ハジウ エコール・ポリテクニーク(フランス国立理工科学校)の学生だったときに日本のフランス大使館でサマーインターンとして働いたのが日本との最初の出会いです。すぐに日本のことが大好きになり、フランスに帰国後も「いつかまた日本で働きたい」と思っていました。

 その後、プリンストン大学の博士課程に進学し、研究活動を行っていたところ、経済産業研究所(RIETI)がエコノミストを募集していると聞きました。すぐに応募し、2004年に再び日本で働くことになりました。それから1年半、RIETIの研究員を務めました。

佐藤 それが日本企業を研究されるきっかけとなったわけですね。