経済成長率が鈍化して景気が悪化すると、過剰雇用を削減する必要性が高まる。バブル崩壊後の1990年以降、「人件費の固定費化を回避したい」という企業の機運が一層高まったため、正社員の数を抑制し、非正規労働者を増やすというトレンドが生まれた。「アジア通貨危機」が発生し、金融危機が起きた1997~98年頃から、この傾向はさらに強まったように感じられる。

 また、経済のグローバル化、特に資本のグローバル化も非正規雇用を増加させた原因だ。従来企業は、銀行などの金融機関を介した間接金融によって資金を調達していたため、長期安定経営が求められた。しかし、資本のグローバル化によって外国人株主が増え、長期的な成長・安定と共に短期的に利益を上げる必要性も高まった。

 そうした流れのなかで、企業にはガバナンスの変革が求められ、社員と同様に株主のようなステイクホルダーも重視せざるを得ない状況になった。ただでさえ景気が後退しているなかで、正社員を固定費化させることが問題視されたこともあり、雇用調整を行ないやすい非正規社員に仕事がシフトした。

 そこで、従来は主婦パートが中心だった非正規社員に、不本意ながら非正規にならざるを得ない若者が組み込まれるようになっていった。今や「非正規の2割弱が世帯主」という状況だ。そうした状況を受けて、ようやく社会が正社員と非正規社員の賃金格差を問題視し始めたといってもいい。

 また、二極化の問題は、一時点の給与格差だけではないことも忘れてはならない。一度非正規社員になると、なかなか正社員になることができないという“固定化”が起きている。

 非正規社員は企業により能力開発の機会がほとんど与えられず、勤続年数を重ねたとしても、技能蓄積が難しく、十分なキャリア形成ができないでいる。非正規雇用には、「臨時型非正規」と「常用型非正規」の2タイプがあるが、現在増加しているのが常用型非正規であることからも“固定化”の深刻さが読み取れるだろう。

非正規社員の職歴を評価して
「労働市場の高質化」を目指すべき

――では、非正規社員の“固定化”を防ぐには、どうすればよいのか。

 我々が「パネルデータ」という調査を行ない、個人を長期間追跡調査したところ、非正規から正規に転換できた人が多くはないが存在することがわかった。彼らがどうやって正規に転換できたのかというと、自己啓発や能力開発を受けたことがわかっている。