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山田厚史の「世界かわら版」

米大統領選で自壊し始めた「強者のためのTPP」

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第105回】 2016年3月17日
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 環太平洋経済連携協定(TPP)が、各国の批准を前に、失速し始めた。「21世紀の経済ルールを描く」と主導してきたアメリカで鮮明になっている。オバマ大統領は残る任期で批准を目指すというが、肝心のTPP実施法案の成立は絶望視されている。

 大統領候補の指名レースで、「TPP賛成」だった共和党のルビオ候補が地元フロリダで負け、撤退を表明。TPPを担ぐ候補は1人もいなくなった。トップを走るトランプ候補は「完全に破滅的な合意だ」と歯牙にもかけない。民主党ではオバマ政権でヒラリー・クリントン候補が「反対」を表明。追撃するサンダース候補はTPP批判の急先鋒だ。

 TPPは2月4日に各国が署名した。この日を起点に、2年以内に加盟国が国内手続きを終えれば、その60日後から発効する。手続きが終わらない国があっても、6ヵ国以上が手続きを終え、それらの国のGDPを足し合わせ全体の85%を超えれば発効となる。

 ということは経済規模が大きい米国と日本の手続き完了が不可欠なのだ。どちらかが批准にしくじればTPPは成立しない。

米国のグローバル資本に
ハイジャックされたTPP

 「TPPはアメリカの国益につながる戦略的経済連携」と日本では理解されてきた。シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリという「4つの小国」が自国にない産業を補い合う経済連携だったTPPにアメリカが目をつけ、「アジア太平洋市場」を自分のルールで作ろうとしたのがTPPだ。

 「ここでTPPは変質した。投資と金融サービスが新たに盛り込まれ、グローバル資本によるルール作りが前面に出るようになった」

 協定文書の分析をしている和田聖仁弁護士は指摘する。

 小国連合だったTPPはアメリカにハイジャックされ、針路が変わった。操縦桿を握るのはアメリカ発のグローバル資本である。

 「米国でTPP交渉を担当するのは通商代表部(USTR)。ここは商務弁護士の巣窟でアメリカに都合のいいルール作って世界で覇権を目指す戦略的部門です」

 日本の通商関係者はいう。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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