今回は、日本が協力を表明したミャンマー・ダウェー経済特区のポテンシャリティについて解説する。「タイ、ミャンマーにとってのダウェーの位置付けとは何か」「現在前向きに進み始めたのは何が理由なのか」「その場合の想定される課題と成功のためのポイントは何か」、検証していきたい。

ダウェー経済特区のポテンシャリティ

 ダウェー経済特区は、2012年に動きが始まったティラワに対し、早くも2008年には動き出していた。規模でいってもティラワが2,400haであるのに対し、ダウェーは当初の報道では20,000haと、約8倍の面積と圧倒的な広さだったため、各国の注目を集めていた。しかしながら、面積の広さばかりが注目されるが、実はダウェーの重要性には、他に3つの理由がある。それは、(1)深海港であるがゆえ、容積の大きい物資の出し入れが可能な点、(2)バンコクとの地理的な近さ、(3)上記二点に由来する物流上の重要性である。
 一点目の深海港であるがゆえに、容積の大きな物資の出し入れが可能な点について、ティラワは水深9m程度しかなく、大型工作機械等の海路での積み入れが難しいといわれているのに対し、ダウェーは水深20mと2倍以上ある。それゆえ、ティラワが縫製等を中心とする軽工業に偏りがちなのに対し、ダウェーではより広範な事業が可能であると見込まれている。
 二点目はバンコクとの地理的な近さである。ダウェーはバンコクの西300kmに位置しており、現在タイに進出している多くの日系企業にとっては、陸路でバンコクからミャンマーへと輸送する手段が拡充されることになる。
 三点目は、一・二点目と密接に関わるのだが、ダウェーの物流における重要性である。ダウェー経済特区の開発には、タイのバンコクとミャンマーのダウェーを結ぶという道路開発も含まれている。実はこれが非常に重要な点で、このバンコク・ダウェー間が結ばれれば、ベトナムのホーチミン、カンボジアのプノンペン、タイのバンコクなど、大都市を結ぶ南部経済回廊が完成する。そうなれば、マラッカ海峡を経由せずにインド洋と太平洋が結ばれ、メコン地域のインド洋アクセスが可能になり、インドはもちろん、ヨーロッパやアフリカなど西側諸国に向けた進出が活発化する。こうした対西側諸国への物流リードタイムの短縮は、東南アジアでビジネスを展開する日系企業にとって、注目度の非常に高いポイントである。