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海から見た世界経済
【第6回】 2016年3月25日
著者・コラム紹介バックナンバー
山田吉彦

「石油価格のメカニズム」
2015年の大暴落、その真相とは?

2015年に起こった石油価格暴落。1バレル約100ドルだった石油価格(2014年)は、一気に36ドルまで下がりました。その原因と石油価格のメカニズムを見ていきましょう。「海と経済」の第一人者であり、新刊『完全図解 海から見た世界経済』の著者である山田氏に聞いてみました。

石油価格の暴落は、
なぜ起こったのか?

 2015年は石油価格が暴落しました。国際的な原油価格の指標となるWTI原油価格は、2014年6月20日、1バレル当たり107・95ドルでしたが、2015年12月28日には、36・36ドルまで下落。実に66%も下落してしまいました。

2015年の石油価格暴落。その流れを追いつつ、「石油価格のメカニズム」を見ていきましょう。

 石油価格の急速な下落の引き金になったのは、「シェールオイル開発の影響による、アメリカ内における石油のだぶつき」でした。2013年、アメリカでは、それまで1日に500万バレルほどの石油産出量でしたが、810万バレルまで急速に増加しました。その内、350万バレル近くがシェールオイルです。
※シェールオイルは石油の一種

 かつてアメリカでは石油の輸出を制限していました。しかし2014年、シェールオイルの生産による「国内石油の余剰解消」のため、法律を改正し、アメリカ内で産出された石油を輸出できるようにします。テキサス産の原油をヨーロッパに輸出しますが、石油を海外へ送り出すための施設も不足し、供給過多による価格の低迷を解消することはできませんでした。

 2014年時点でシェールオイルの生産、流通に関わるコストは、1バレル当たり70ドルから90ドル前後と試算されていました。いずれ量産体制が確立すると1バレル当たり40ドルにまで下がると予想されています。これは、OPEC(石油輸出国機構)に加盟する既存の原産国にとって脅威になります。

石油価格を巡る攻防戦
アメリカ、OPEC

 石油価格の大幅な下落の原因をアメリカのシェールオイル増産によると見たOPECは、生産量の維持を決め、価格の低迷を容認しました。

サウジアラビアの石油産出・流通コストは、1バレル当たり18ドルといわれ、価格競争に十分に耐えられます。一方、アメリカのシェールオイル関連企業の一部は既に破綻してしまいました。OPECの生産体制維持は、シェールオイル潰しであるともいわれています。

 また、石油価格を低水準に抑えることは、イスラム過激組織IS対策としても推進されています。ISは、軍事占領した地域から産出する石油を軍資金にしています。

 さらに、石油価格の低迷は、クリミア問題により欧米諸国と対立しているロシアにも大打撃を与えています。ロシアは世界でも1、2を争う原油生産国ですが、寒冷地という厳しい環境と後発の産油国のため、生産コストが高く、原油価格が1バレル当たり50ドルに達しないと利益を上げることができません。石油の売却益がなくては、国家財政の維持も困難です。原油価格の低迷は、ロシアへの経済制裁にもなっています。

石油価格下落による
悪影響とは?

原油価格の低迷は、海底資源開発の速度を鈍らせる恐れもあります。2013年における、全世界における石油・天然ガス探鉱開発投資額は、68兆円ほどですが、その内の約29兆円が海洋での開発に関わるコストです。

 2015年1月時点で、海底から石油およびガスを採取する海洋掘削リグは、世界に954基存在しています(その他に224基を建造中)。最も多いのはメキシコ湾です。アメリカの海域とその周辺に設置されているものが186基あります。その次に海底掘削リグが多いのは、中東地域で155基、次いで東南アジアの125基です。

 海洋における石油生産の比率は、2020年までには、全石油生産量の3分の1に上昇すると見込まれています。現在のように石油価格が低迷する状況では、新たな海洋油田開発は推進することができなくなるでしょう。原油価格1バレル当たり50ドルが、海洋油田開発推進のボーダーラインのようです。

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