4年間で3度のリーグ優勝を果たした強豪チームである、サッカーJ1・サンフレッチェ広島。その新しいスタジアム建設を巡り、広島が揺れている。広島県などが本命視している海沿いの立地に対して、サンフレッチェ広島が「ノー」を突きつけ、広島駅に近い立地の独自プランを発表したのだ。今、広島に何が起きているのか。(取材・文/「ダイヤモンドQ」編集部 野口達也)
なぜサンフレッチェ広島会長は
進退をかけて新球場案を出したのか
「(サンフレッチェ広島会長として)進退も視野に入れて臨んでいる」
3月3日、サンフレッチェ広島は独自のスタジアムプランを発表。記者会見の席上で、久保允誉会長は決意の固さを示すために、そう言い切った。
久保会長は、なぜ進退をかけてまでも独自案を発表したのか。それは新スタジアム建設が、自らの思いやファンの願いとはかけ離れたものになろうとしているからだ。
現在のサンフレッチェ広島のホームスタジアムは、アクセスが悪いことで知られる。市の中心部から新交通システムで37分以上という遠い場所にあり、JR広島駅からも乗り換えなしでは行けない。さらに1992年開場で改修の必要が高まっている。客席とピッチの距離が長く、決していいスタジアムとは言えなかった。
そのため、過去にスタジアム移転計画が何度も浮上。2013年には広島県・広島市、広島商工会議所が中心となってサッカースタジアム検討協議会が設立され、スタジアム整備の候補地や課題について議論してきた。14年末には最終報告書を作成し、スタジアム建設予定地として2ヵ所を推薦するに至った。
1つは海沿いの「広島みなと公園」。もう1つは広島駅から近く、広島東洋カープがかつて本拠地として使用していた「旧広島市民球場跡地」だ。原爆ドームも隣接している。
ところが、事はそう簡単ではない。検討協議会は2ヵ所を推薦しているものの、県・市・商工会議所は明らかに前者の「広島みなと公園」を推している。最終報告書をつぶさに見ていくとその様子がわかる。