「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名ブログの文章が大きな話題となっている。安倍晋三政権が打ち出した「一億総活躍社会」で女性活躍の推進が提唱されながら、「待機児童問題」がなかなか解消しない現状に対する不満を訴えた内容だった。それは、2月半ばにネット上で評判になり始め、多くの同じ境遇の人たちの共感を集めた。メディアがこの問題を取り上げて議論が沸き起こり、国会前では、子育てママが「落ちたのは私だ」と訴えるデモが行われた。野党は、「待機児童問題」を安倍政権に対する攻撃材料に使い始めた。

 7月に参院選を控え、危機感を強めた安倍政権は、待機児童解消に向けた対策作りを急ぎ始めた。「保育園落ちた日本死ね!!!」によって、これまで遅々として進まなかった「待機児童問題」は大規模な政治的ムーブメントとなった。

 しかし、今回は「待機児童問題」に対する政治への批判とは一線を画したい。この問題が遅々として解決しない理由の1つである「幼保一元化」が進まないことに焦点を絞る。そして、英国との比較を通して、政治家のこの問題に対する認識不足・不作為以前に、制度的な問題で政治がリーダーシップを発揮できない現状を指摘する。

誰が考えても合理的な「幼保一元化」を阻む
文科省と厚労省の「縦割り行政」

「幼保一元化」とは、異なる歴史的経緯により設立されて所管官庁が異なる幼稚園と保育園を一元化することで、教育水準の均等化とサービスの効率化を図り、少子化の進行によるさまざまな問題の解決を目指す政策である。

 保育園の待機児童が深刻な問題となっている一方で、幼稚園の多くで定員割れが起きている。3歳児から5歳児を預かる公立幼稚園の9割以上、私立幼稚園の8割が定員割れしている現状を指摘する調査結果もある(NHK生活情報ブログ「幼稚園の定員割れ深刻」)。

 もっとも、首都圏や近畿圏では、入園が激戦となる人気の幼稚園もある。事は単純ではないということだが、これも突き詰めれば、「預かり保育」を実施している幼稚園が人気を集めているのだ。結局、専業主婦が減少し、働く母親が増えることで、保育園の需要が多くなり、逆の幼稚園の需要は激減しているということだ。幼稚園は「預かり保育」など、保育園と同じ機能を持たなければ幼児を集められなくなっているのである。

 この現実に鑑みて、「待機児童問題」を解決するために考えられたのが、幼稚園と保育園機能を一体化させる「幼保一元化」だ。ところが、幼保一元化の議論は10年以上前から続いているにもかかわらず、一向に進展していないのである。その大きな理由は、幼稚園の所管が文部科学省、保育園が厚生労働省と「縦割り行政」になっていることだ。