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岸博幸の政策ウォッチ

待機児童問題が緊急対策でも解決しない理由

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第30回】 2016年4月1日
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「保育園落ちた日本死ね!!!」ブログから、一気に待機児童問題は解消に向けて動き出したかのように見えるが…

 「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログをきっかけに待機児童問題に再度注目が集まるようになり、厚生労働省も今週になって待機児童の解消に向けた緊急対策を発表しました。

 待機児童問題の解決のためには、保育園の数を増やすことと、全産業平均と比べて月額10万円も安い保育士の給与を引き上げて保育士のなり手を増やすことが必要であることを考えると、発表された対策で多少の効果は期待できるでしょう。また、野党5党が国会に提出した、保育士の給与を月5万円引き上げる法案も、当然ある程度の効果が期待できます。

 従って、短期的にできる対応を行なうという観点からは、これらの対策をどんどん進めるべきと思いますが、長期的に待機児童問題を解決するには、保育サービスを巡る構造的な問題にもメスを入れる必要があります。

国と地方のいびつな役割分担が生む障害

 それは具体的には、国と地方のいびつな役割分担を正すということです。現状では、保育サービスの提供は市町村の義務となっている一方で、保育サービス提供の枠組みは国が決めています。しかし、それが保育サービスの充実の障害となっている面は否めません。

 例えば、国は2000年に株式会社の保育所参入を認めました。しかし、全国の保育所に占める株式会社の割合は未だ数%にとどまっています。2014年に公正取引委員会が行なった調査では、回答があった429の自治体のうち株式会社が運営する保育所がある自治体は僅か50だけでした。

 その理由としては、

・自治体が独自のルール(例えば、小規模認可保育園の園長には6年間継続して保育業務に携わった経験を求めるなど)を作っている

・事業者が一定の基準をクリアしていれば自由に保育園を開園できるはずなのに、国の補助は運営部分のみで初期投資への補助は自治体の負担なので、自治体に大きな裁量権がある

・認可保育所の大半を担う社会福祉法人のトップは地域の名士である場合が多いが、株式会社の参入を嫌う場合が多い

 といったことが影響していると考えられます。

 もちろん、今週の緊急対策では、許可基準を満たす保育園の積極的認可を自治体に徹底するという方針が入っており、これ自体は高く評価できます。しかし、やはり保育に関する国と地方の役割分担を直さない限りは、全面的な解決は難しいのではないでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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小泉政権時代に竹中平蔵氏の秘書官を務め、数々の構造改革を立案・実行した岸博幸氏がテレビや新聞が決して報じない知られざる政治の裏側を暴きます。

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