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地球を「売り物」にする人たち
【第7回】 2016年4月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
マッケンジー・ファンク,柴田裕之

花粉症、ジカ熱、天候保険……
温暖化ビジネスの「タネ」はいたるところに
『地球を「売り物」にする人たち』著者マッケンジー・ファンク氏インタビュー【後編】

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気候変動は、いったい「誰」の利益になっているのか――。地球温暖化で儲けを狙う人たちを追った『地球を「売り物」にする人たち』。6年をかけて、世界24ヵ国、アメリカだけで数十州をめぐって書かれたジャーナリズムの結晶ともいえる本書の著者マッケンジー・ファンク氏に、インタビューを敢行した。日本への影響、そして今まさに立ち上がりつつある新手の「温暖化ビジネス」とは?(聞き手:国際ジャーナリスト 大野和基)

「日本沈没」のシナリオを回避する現実的すぎる手段

―― 気候変動脆弱性指数では日本は170ヵ国中86位ですが、これは何を意味するのでしょうか。

マッケンジー・ファンク
アメリカ・オレゴン州生まれ。スワスモア大学で哲学、文学、外国語を学ぶ。2000年からアメリカ各地、海外に赴いて記事を書く。解けてゆく北極圏の海氷の報道で環境報道に与えられるオークス賞を受賞し、タジキスタンで実施したグアンタナモ強制収容所から初めて解放された囚人のインタビューで若手ジャーナリストに与えられるリヴィングストン賞の最終候補に残った。これまでハーパース、ナショナル ジオグラフィック、ローリングストーン、ニューヨーク・タイムズなどに寄稿し、高い評価を受ける。本書が初の著書となる。
本書は、ニューヨーカーでエリザベス・コルバートが「必読書」に、米アマゾンで2014年1月の「今月の1冊」に選出されたほか、ネイチャー、ウォール・ストリート・ジャーナル、GQ等、書評が掲載された紙誌は数十にのぼる。著者ホームページ:http://www.mckenziefunk.com/#windfall

マッケンジー・ファンク(以下ファンク) 日本を特別調査したわけではありませんが、このランキングには意外なことがよくあります。オランダは国土が低く、海水の水位が上がってきているので、海面上昇によって水没するのではないかと思うでしょう。でも指数を見るともっとも脆弱ではない国の中でも、トップに近い。それは、オランダには防波堤を建設するだけの資金が十分あるからです。

 この指数には2つの要素があります。1つは環境変化がその国にどれくらい影響があるか、ということを示すこと。もう1つはその影響と戦うための資金がどれくらいあるか、ということです。日本が86位ということは、脆弱ではあるが、特に脆弱ではないということです。私は科学者ではありませんが、とある研究によると日本が位置する域は他の域よりも海面がはやく上昇しています。

 さらに日本はかなりの量の食糧を輸入しているので、食糧の点から見ると脆弱でしょう。食糧が入手しにくくなり、国がナショナリスティックになれば、日本にとってはさらに問題が出てくるでしょう。防波堤を建設する資金が十分なければ問題になるでしょう。最近の日本の経済の縮小を見ると、資金が足りなくなるかもしれません。もしこれが1980年代、1990年代であれば、もっとも脆弱ではない位置にあったでしょう。防波堤を建設する資金が潤沢にあったからです。でも時代は変わりました。

温暖化ビジネスの現場で見た、ハゲタカたちの素顔

―― 本の中に出てくるシェルのような大企業と、気候変動に乗じてお金儲けをしようとする起業家をあなたは区別しますか?

ファンク 多くの違いがあると思いますが、倫理的な面での違いがあるものもあれば、プラクティカルな面での違いもあります。

小規模の企業は気候変動に「賭け」をしています。大企業のように投資家に詳しく答える必要はありません。もし大企業で、株主に対して1年、2年、さらにもっと長くリターンがなければ、その会社は悪い会社だと思われます。気候変動はゆっくり動きます。本に出てくる企業のほとんどは実際のところ小規模の会社です。彼らは自分のお金を使っているか、ヘッジファンドのお金を使っているので、大企業と同じような投資家からのプレッシャーがありません。

 一方、大手石油会社のシェルは、30年、40年先を見ている企業です。その点では非常にユニークです。彼らは気候変動だけに焦点を合わせているわけではありません。気候変動に関することは、あくまでもプロジェクトの1つなのです

―― なるほど。あなたは気候変動に焦点を合わせている小規模の起業家たちを「vulture(ハゲワシ、他人を食い物にする人)」と考えますか?

ファンク 最初に取材を始めたときはそう考えていました。温暖化で儲けるなんて非常に皮肉で、ハゲワシ的なことだと。しかし、いったん人に会って取材を進めると、もっと複雑なことであることがわかりました。多くの人は世のためにいいことをしていると思っています。たとえば、水に価格をつけることで水危機の役に立っています。環境危機を助けています。南スーダンの部族軍長とパートナーを組んだ投資家(フィル・ハイルバーグ)であっても、スーダンにビジネスをもたらしているのは確かで、それはいいことでしょう。つまり彼は純然たるハゲワシではありません。アフリカに資本主義をもたらすこと、それ自体はいいことです。私は取材していて、こういう人たちも我々と同じような人間であると思いました

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マッケンジー・ファンク(McKenzie Funk)
アメリカ・オレゴン州生まれ。スワスモア大学で哲学、文学、外国語を学ぶ。2000年からアメリカ各地、海外に赴いて記事を書く。解けてゆく北極圏の海氷の報道で環境報道に与えられるオークス賞を受賞し、タジキスタンで実施したグアンタナモ強制収容所から初めて解放された囚人のインタビューで若手ジャーナリストに与えられるリヴィングストン賞の最終候補に残った。これまでハーパース、ナショナル ジオグラフィック、ローリングストーン、ニューヨーク・タイムズなどに寄稿し、高い評価を受ける。本書が初の著書となる。
本書は、ニューヨーカーでエリザベス・コルバートが「必読書」に、米アマゾンで2014年1月の「今月の1冊」に選出されたほか、さらにネイチャー、ウォール・ストリート・ジャーナル、GQ等、書評が掲載された紙誌は数十にのぼる。
著者ホームページ:http://www.mckenziefunk.com/#windfall
 

柴田裕之(しばた・やすし)
1959年生まれ。翻訳者。訳書にジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)、ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト』(早川書房)、アレックス(サンディ)・ペントランド『正直シグナル』(みすず書房)、ジョン・T・カシオポ他著『孤独の科学』(河出書房新社)、マイケル・S・ガザニガ『人間らしさとはなにか?』(インターシフト)、サリー・サテル他『その〈脳科学〉にご用心』、ダニエル・T・マックス『眠れない一族』(以上、紀伊國屋書店)、ポール・J・ザック『経済は「競争」では繁栄しない』、フランチェスカ・ジーノ『失敗は「そこ」からはじまる』(以上、ダイヤモンド社)ほか多数


地球を「売り物」にする人たち

「北極が解ければ、もっと儲かるのに」
「地球温暖化は、新たなビジネスチャンスだ」

氷の下の資源争奪戦に明け暮れる石油メジャー、水と農地を買い漁るウォール街のハゲタカ、「雪」を売り歩くイスラエルベンチャー、治水テクノロジーを「沈む島国」に売り込むオランダ、天候支配で一攫千金を目論む科学者たち……。
温暖化「後」の世界を見据えて、実際に気候変動を利用して「金持ち」になるべく行動を起こしている国家、企業、人物を世界24か国で徹底取材。
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「地球を「売り物」にする人たち」

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