ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
地球を「売り物」にする人たち
【第6回】 2016年4月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
マッケンジー・ファンク,柴田裕之

「気候変動は市場の力でなおせる」
世界24ヵ国で見た「都合のいいモラリティ」
『地球を「売り物」にする人たち』著者マッケンジー・ファンク氏インタビュー【前編】

1
nextpage

地球温暖化は、カネになる――。いま世界じゅうで密かに成長している「温暖化ビジネス」の数々を白日の下にさらした『地球を「売り物」にする人たち』。6年をかけて、世界24ヵ国、アメリカだけで数十州をめぐって書かれたジャーナリズムの結晶ともいえる本書の著者マッケンジー・ファンク氏に、インタビューを敢行した。彼は、現地現場でいったい何を見たのか?(聞き手:国際ジャーナリスト 大野和基)

きっかけは、カナダ軍からの奇妙な「招待状」

―― 本題に入る前に、粘り強い、徹底した調査に基づく、このすばらしい作品を書いたことについて敬服します。この作品が私を含め他のジャーナリストが追求すべき調査報道の模範になることは間違いありません。

マッケンジー・ファンク
アメリカ・オレゴン州生まれ。スワスモア大学で哲学、文学、外国語を学ぶ。2000年からアメリカ各地、海外に赴いて記事を書く。解けてゆく北極圏の海氷の報道で環境報道に与えられるオークス賞を受賞し、タジキスタンで実施したグアンタナモ強制収容所から初めて解放された囚人のインタビューで若手ジャーナリストに与えられるリヴィングストン賞の最終候補に残った。これまでハーパース、ナショナル ジオグラフィック、ローリングストーン、ニューヨーク・タイムズなどに寄稿し、高い評価を受ける。本書が初の著書となる。
本書は、ニューヨーカーでエリザベス・コルバートが「必読書」に、米アマゾンで2014年1月の「今月の1冊」に選出されたほか、ネイチャー、ウォール・ストリート・ジャーナル、GQ等、書評が掲載された紙誌は数十にのぼる。著者ホームページ:http://www.mckenziefunk.com/#windfall

マッケンジー・ファンク(以下ファンク) お褒めの言葉をいただき、どうもありがとうございます。

―― しかも、これがあなたの処女作であることを考えると、本当によくやったと思います。

ファンク ありがとうございます。この本を書くのに長すぎるほどの時間をかけました。

―― さて、気候変動にビジネス面の裏の世界があることに気づいたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

ファンク まったくの偶然とは言いませんが、運と言ってもいいでしょう。私は当時ニューヨーク市に住んでいて、いろいろなテーマについて書いていました。グアンタナモ湾収容キャンプから初めて帰還した人(編集部注:ファンク氏はこのインタビューでリヴィングストン賞の最終候補に残った)や、パキスタンの地震救援についても書きました。別に気候変動を専門にしていたわけではありません。実際のところ、気候変動はいささか退屈なテーマだと思っていました。かなりの科学知識が必要ですから。

 ところがある日、カナダの北西航路(太平洋と大西洋を結ぶ北アメリカ大陸北岸航路)を守ろうとする軍隊に入っているカナダ人についてのメールが届きました。そのメールに書かれていたのは、氷が解けて通行可能になった航路の北側の領有権を主張する王立カナダ軍のオペレーションのことで、私はこれをとても奇妙だと思いました。気候変動について今まで耳にしたことがあるものとは、かなり異なった視点だと思ったのです。

―― それがあなたの好奇心をかきたてたのですね。

ファンク そうです。それが本書の第1章になりました。カナダ軍から取材の招待を受けるのは、とても簡単なことでした。自分たちが領有権を主張していることを知ってもらいたいからです。フリゲート(小型の軍艦)に乗るのも簡単でした。

―― カナダ軍は、ある意味でジャーナリストを使って自分たちがやっていることは正しいということを伝えたかったのですね。

ファンク その通りです。ですからジャーナリストにはとてもオープンでした。これが契機となって、私は気候変動につけ込んで儲けようとする人がいることをテーマに取材を始めたのです。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

トレーシー・カチロー 著/鹿田 昌美 訳

定価(税込):本体1,600円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
子どもの豊かな心を育て、頭と体を伸ばしていくために親が知っておきたいことについて、最新の科学研究をもとに「最も信頼」できて「最も実行しやすい」アドバイスだけを厳選して詰め込んだ貴重な本。子にかけるべき言葉、睡眠、トイレトレーニング、遊び、しつけまで、これ一冊さえ持っていれば大丈夫という決定版の1冊!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


マッケンジー・ファンク(McKenzie Funk)
アメリカ・オレゴン州生まれ。スワスモア大学で哲学、文学、外国語を学ぶ。2000年からアメリカ各地、海外に赴いて記事を書く。解けてゆく北極圏の海氷の報道で環境報道に与えられるオークス賞を受賞し、タジキスタンで実施したグアンタナモ強制収容所から初めて解放された囚人のインタビューで若手ジャーナリストに与えられるリヴィングストン賞の最終候補に残った。これまでハーパース、ナショナル ジオグラフィック、ローリングストーン、ニューヨーク・タイムズなどに寄稿し、高い評価を受ける。本書が初の著書となる。
本書は、ニューヨーカーでエリザベス・コルバートが「必読書」に、米アマゾンで2014年1月の「今月の1冊」に選出されたほか、さらにネイチャー、ウォール・ストリート・ジャーナル、GQ等、書評が掲載された紙誌は数十にのぼる。
著者ホームページ:http://www.mckenziefunk.com/#windfall
 

柴田裕之(しばた・やすし)
1959年生まれ。翻訳者。訳書にジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)、ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト』(早川書房)、アレックス(サンディ)・ペントランド『正直シグナル』(みすず書房)、ジョン・T・カシオポ他著『孤独の科学』(河出書房新社)、マイケル・S・ガザニガ『人間らしさとはなにか?』(インターシフト)、サリー・サテル他『その〈脳科学〉にご用心』、ダニエル・T・マックス『眠れない一族』(以上、紀伊國屋書店)、ポール・J・ザック『経済は「競争」では繁栄しない』、フランチェスカ・ジーノ『失敗は「そこ」からはじまる』(以上、ダイヤモンド社)ほか多数


地球を「売り物」にする人たち

「北極が解ければ、もっと儲かるのに」
「地球温暖化は、新たなビジネスチャンスだ」

氷の下の資源争奪戦に明け暮れる石油メジャー、水と農地を買い漁るウォール街のハゲタカ、「雪」を売り歩くイスラエルベンチャー、治水テクノロジーを「沈む島国」に売り込むオランダ、天候支配で一攫千金を目論む科学者たち……。
温暖化「後」の世界を見据えて、実際に気候変動を利用して「金持ち」になるべく行動を起こしている国家、企業、人物を世界24か国で徹底取材。
日本人だけが知らない地球温暖化ビジネスの実態とは。

ニューヨーカー、ウォール・ストリート・ジャーナル、ネイチャー、GQ、ワイアード、タイム……絶賛の超話題書、ついに日本上陸。

「地球を「売り物」にする人たち」

⇒バックナンバー一覧