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欧州ストレステストは当局の広報活動?
拍子抜けの金融市場を包む「嵐の前の静けさ」

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第136回】 2010年8月3日
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不健全な銀行がわずか7行?
金融市場の関係者は「拍子抜け」

 7月23日、欧州銀行監督委員会(CEBS)は、欧州金融機関91行に対する健全性審査(ストレステスト)の結果を発表した。

 それによると、健全性に問題があるとされた金融機関は7行のみとなり、それ以外の金融機関は全て健全という“玉虫色の結果”となった。

 今回の結果については、金融専門家や市場関係者にとって“拍子抜け”というのが、もっとも率直な感想だろう。すでに多くの専門家から、「審査基準が甘すぎるため、これでは、金融市場の金融機関に対する不安を解消することはできない」との批判が出ている。

 また、金融機関の信用力を最も端的に表す欧州のインターバンク市場(銀行間資金貸借市場)で、ユーロ建ての金利が上昇している。それを見ると、今回の審査結果では欧州金融機関の信用不安が解消されておらず、むしろ一部の金融機関については、信用不安が高まっていることがわかる。

 確かに、今回の審査基準を見ると、ギリシャなどの国債や不動産に関する評価基準がかなり緩い。これでは、本当の意味で金融機関の信用力を評価したことにはならない。

 また、「不合格」とされた金融機関については、すでに当該国の公的資金の注入が決まっており、“結果ありき”の審査という印象を拭えない。金融市場に安心感を与えようとする政策意図は理解できるのだが、これでは問題の解決にはならない。むしろ逆効果になることも懸念される。

 今後、欧州諸国の財政再建に問題が発生するようなことがあると、欧州の金融システムに大きな障害が発生することも考えられる。そのリスクは、頭に入れて置いたほうがよい。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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