長年の苦労が報われ、夢が叶って総理大臣になった父親と、美容や料理に興味のある女子力高い系大学生の息子。ある日突然、そんな二人の魂が入れ替わってしまったことで巻き起こるドタバタ劇を描いたドラマ『民王』(テレビ朝日系)。ヒットメーカー池井戸潤氏の同名小説を原作に持つ本作は、昨年7月に放送されると、深夜帯にもかかわらず初回で8.5%という高視聴率を記録し、瞬く間にドラマファンの間で「これは面白い!」と話題になった。ドラマ終了後も数々の賞を受賞し、シリーズ化を熱望するファンの声が鳴り止まなかった本作だが、ついにスペシャル版、スピンオフ版、さらにはネットドラマという大盤振る舞いで復活することが決定。果たしてその裏にはどんな制作秘話が隠されているのか。飯田爽プロデューサーに直撃インタビュー。
『民王』誕生のきっかけは
原作者・池井戸潤氏のひとこと
――もともと、飯田プロデューサーが池井戸作品のファンだったことから、『民王』のドラマ化が決まったそうですね。
池井戸潤・著/文藝春秋・刊
飯田 「6年ほど前に一度池井戸さんとお会いする機会があったんです。そのときに、当時制作を担当していた『金曜ナイトドラマ』枠(『民王』も放送されたテレビ朝日の金曜11時台スタートのドラマ枠)についてお話ししたら、池井戸さんから『(深夜なら)僕の作品だったら「民王」が合うんじゃないかな』とおっしゃっていただいて。その時はまだポプラ社のウェブマガジンで連載中だったので、帰って早速読んでみたら面白くて、面白くて。『これって本当に池井戸作品なの?』って思うほど信じられない展開になっていくし、ハジケっぷりがまさに『金曜ナイト枠だ!』って感じでした。すぐに、これをぜひドラマ化したいというお話をさせていただいたんですが、思いがけず時間がかかってしまって。でも月日を要した分、キャスティングも脚本も目指すイメージと一致するものができたと思っています」
――プロデューサーの目から見て『民王』がここまで人気を得た理由は何だと思いますか?
飯田 「人気を得たと言っていただけるなら、ですが、一番はやっぱり、なかなかテレビドラマの題材としては難しい政治の世界のネタを、しかもコメディとして描いたところが珍しかったんじゃないでしょうか。
『民王』をドラマ化する場合、二通りのやり方があったと思うんです。大真面目に政治のネタに向き合ってヒューマンドラマに仕立てる方法と、今回のように原作の持つコメディ要素を膨らませて、『金曜ナイトドラマ』枠らしい、週末の夜にダラ~っと気軽に見るドラマにする方法。今回は絶対に後者のほうでいきたいと思ってました。おじさんたちが大真面目に『親子が入れ替わる』という荒唐無稽な設定に右往左往しながら問題を解決していくんだけど、どんどん話がややこしくなったり、ヘンな方向に転がっていったりするんです。そこをいかに面白く描いていくかが勝負だと思いました。
それに加えて、役者さんたちの組み合わせがうまくいったのも成功の一因だと思っています。今回は役者さんたちも皆さん、楽しんで演じてくれていて、現場でセリフを足していったり、役のキャラクターを膨らませていったりをしてくださっていたんです。やっぱり、ドラマを見てくれる人たちっていうは、役者さんのお芝居を観たいんだと思うんです。そういう人たちに制作サイドの熱意と役者さんたちの熱意が伝わり、喜んでもらえた結果かなと感じています」
――確かに、これまで強面役のイメージが強い遠藤憲一さんが演じた「女子力高い系男子役」には驚かされました。
飯田 「私自身、以前から遠藤さんは強面だけどかわいいところがある人だなっていう印象を持っていたので、『民王』のドラマ化が決まったときに、絶対武藤総理の役は遠藤さんにやってもらいたいと思っていて。でも、遠藤さんはスケジュールがいっぱいだったので諦めかけていたのですが、原作と役柄をとても気に入ってくださって、お仕事のスケジュールを調整して出てくださることになったんです。
息子の翔役を演じた菅田将暉くんも、原作を読んで即『やりたい!』って言ってくれました。出演が決まった当時から注目されてはいましたが、『民王』出演中にさらにブレイクし、どんどん人気者になっていきましたね」